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神戸アイライト通信NO.33
発行:2015年 8月
◆神戸市に初めて常勤専任の訪問歩行訓練士を配置!
理事長 森 一成
神戸・兵庫に訪問指導事業がないことが神戸アイライト協会設立の原点ですが、前回の通信32号で2014年度現在では常勤専任の訪問指導員(歩行訓練士)を配置した訪問指導事業がないと書きました。
その後、多くの方々が神戸市で常勤専任の訪問指導員(歩行訓練士)配置にご協力、ご尽力していただきました。
その結果、ついに神戸市に常勤専任の訪問指導員(歩行訓練士)の配置が実現しました。
兵庫県内としても初めてです。
神戸市在住の方はもちろんですが、神戸市に通勤、通学、福祉施設通所の場合も対象となります。
白杖歩行以外にも屋内歩行、手引き歩行、ロービジョン歩行、白杖の選択相談等もできます。
他に職場での勤務支援、自宅での家事等の日常生活動作等も可能です。
今後に向けていくつか課題もありますが、神戸市に初めて訪問歩行訓練士の配置という大きな歴史的一歩を踏み出すことができました。
多くの皆様のご理解とご協力、ご支援に心より感謝申し上げます。
なお2015年2月には神戸アイライト協会(中山記念会館)から北西へ8分の布引交差点に兵庫県内の交差点で初めてエスコートゾーン(視覚障害者道路横断帯)が試験設置されました。
地下鉄新神戸駅方面から来る白杖歩行者にとっては、歩行環境の大きな改善です。
まだ1面だけなので今後の拡大に期待しています。
また阪急春日野道駅に向けた点字ブロックの敷設が3月にありました。
2015年度に駅まで完成予定です。
◆2014年度 まとめ
事務局長 和田眞由美
1.トータルサポート事業 7年目!
相談件数は2008年に事業委託を受けてから数えて7400件以上となった。
2014年度は前年度同様1300件を超え、電話による相談に加え、ほぼ毎日相談者が来所している状態であった。
相談には専門相談員、歩行訓練士、視能訓練士、音声パソコン担当が連携して対応した。
また他団体とのネットワークも活用し、相談者の様々な困りごとに対して、トータル的なサポートをおこなった。
現在のスタッフで最大限の対応をおこなっているが、より充実した相談体制を実現するため、訪問の必要性も合わせて、神戸市に対し事業継続および拡大の交渉をおこなった。
2.赤穂市において訪問歩行訓練の事業化が実現!
赤穂市での事業化が決まり、当協会へ事業委託をいただいたことにより、赤穂市在住の方のご自宅へ歩行訓練士を派遣しての訪問歩行訓練が実現した。
他市でもお困りの方々からの訪問希望があるが、現状では来所していただいての相談、館内や周辺を歩いての白杖の基本操作指導で対応した。
困っている方が行政に直接要望していくことが地域福祉改善の早道であり、アイライトフェアでも「視覚リハの訪問指導の現況と課題」をテーマに取り上げ、大阪市や伊丹市での訪問歩行訓練利用者をパネラーに迎え、訪問事業について地域格差があることを知っていただくよう努めた。
3.中山同行援護従業者養成研修を開始!
中山視覚障害者福祉財団より受託し、重度視覚障害者の方の外出を支援する同行援護従業者養成研修一般課程および応用課程を実施した。
一般・応用課程ともカリキュラムに電車やバス乗降等の実習を盛り込み、移動時及びそれに伴う外出先において代筆・代読など必要な視覚的情報の支援の方法についても歩行訓練士(視覚障害専門職)等が指導した。
4.兵庫県内に初めて「エスコートゾーン」設置が実現!
2015年2月12日、神戸市中央区、地下鉄新神戸駅から地上へあがったところ、布引(ぬのびき)交差点の横断歩道上にエスコートゾーンが設置された。
エスコートゾーンは横断歩道上の点字ブロックのようなもので兵庫県内の交差点では初めての設置となった。
(同時に神戸市西区にある神戸視力障害センター東側にも設置)。
2012年10月、当協会の通所施設利用者が布引交差点(南西から南東)を横断中に車両との接触事故に遭い、その後、安全を願って、兵庫県警に要望し、多方面の協力を得て、ようやく設置が実現した。
今回は試験設置で試用期間は約1年ほど。
たくさんのかたにエスコートゾーンというものを知っていただいて各所での設置へ繋がればと願っている。
神戸新聞 2月18日の朝刊に掲載された。
◆神戸の視覚障害教育・福祉の巨星 木下和夫さん逝去
森 一成
今年2015年1月、元神戸市立盲学校教諭で歩行訓練士の木下和夫さんが85歳で逝去しました。
神戸市立盲学校一筋、42年にわたって視覚障害教育に従事しました。
定年退職後は神戸市内で約10年、ボランティア的な歩行訓練を実施しました。
その間実に52年にわたって神戸で視覚障害教育・福祉に尽力されました。
木下和夫さんは1929年(昭和4年)に産声をあげました。
父は当時、兵庫県立盲学校教諭の木下和三郎氏。
和三郎氏は視覚障害者の歩行を初めて体系的に論じた「盲人歩行論」で有名な全盲の視覚障害者でもあります。
1939年(昭和14年)に神戸市立盲学校が開校し、和三郎氏は教諭として赴任しました。
その年に「盲人歩行論」を出版しています。
和三郎氏は三療と盲人歩行を科学として基礎づけた先駆者として、各地で講演活動を行っていました。
しかし終戦直後の1947年(昭和22年)、急性肺炎で54歳の若さで急逝しました。
和夫さんはそのお父さんを継ぐ形で、翌年1948年(昭和23年)に神戸市立盲学校教諭となりました。
和三郎氏と同じく熱意を持って、盲学校教育に取り組みました。
1990年(平成2年)に定年退職するまで、42年にわたって盲教育一筋に尽力しました。
目で点字を読むのが大半の教員の中で、和夫さんは指でも点字を読む稀有な教員でした。
幼小学部の中心的教諭として視覚障害教育に長年尽力したことが評価されて、1982年度の博報賞(現場で尽力した教育実践者の賞)を受賞しました。
また1980年(昭和55年)神戸市立盲学校から初めて教員を歩行訓練士の養成に派遣する時に、若い教員が辞退したために引き受けたとのことでした。
当時50歳で、通常20代、30代で受講する歩行訓練士養成では特例的な扱いだったと思います。
体力的にも厳しい面もあったのではないかとも思われます。
1990年(平成2年)定年退職後は市視協(現在の神戸市視覚障害者福祉協会)の歩行訓練にボランティア的に協力していました。
施設に集めて集団指導をしていましたが、途中から効果的な訪問歩行訓練に切り替えました。
1990年10月より神戸アイライト協会がそれを引き継ぐ形で、今年2015年3月まで神戸市内で訪問歩行訓練をしていました。
私は1989年の神戸市立盲学校見学の時に初めて出会いました。
翌1990年に私が神戸市立盲学校に着任した日が、和夫さんの退職前の最後の勤務日でした。
1日だけの同僚でした。
そんな本来は薄い関係でしたが、盲学校教諭・歩行訓練士の大先輩としていろいろと教えていただきました。
私が盲学校を退職する時もご心配いただき、神戸アイライト協会発足後も陰で支えていただきました。
長年の多大な視覚障害教育・福祉への貢献に敬意を表し、神戸アイライト協会へのご協力に感謝するとともに、心よりご冥福を祈念いたします。
◆魔法の杖のお話
歩行訓練士 住吉 葉月
今回は、おとぎの国のお話?を綴ってみたいと思います。
訪問の歩行訓練で、あっちこっちをてくてく歩いています。
さて歩行訓練と聞くと「自分の行きたい場所へ、安全に移動する練習をする」というイメージがあると思いますが、どうやらそれだけではないらしい、と感じることが多くなりました。
最近のことです。
急激に視力低下が進み、思うように外出ができなくなった方のところへ赴き、白杖を紹介しました。
これで歩いてみましょうと、自宅近辺の移動を確認しました。
後日、再びその方のお宅を訪問すると、…なんだか印象が違うことに気付きます。
「あれ、こんな感じの人だったっけ??」
訓練を始めた頃は「人並になれるでしょうか…」という不安げな発言だったのが、「ひとりでも、行けるんだー!」という喜びの言葉に変わりました。
うつむいていた表情が、明るくなりました。
ご家族からも、優しくなったねと言われたそうです。
歩く練習をしただけなのに…一体、何が起こっているのでしょう?
白杖を持って出かけると、その人に変化が起こることが(たまに)あります。
これをひそかに「魔法の白い杖現象」と呼んでいます。
白杖の練習をしている人が歩きながら変身していく様子を、何度も目撃してきました。
歩行訓練は、白杖操作を習得したり、頭の中で地図を作成したりすることで、目的地へ安全に移動することを目指すものです。
目的地に到達できた達成感が、その人の自信となり、さらに積極的になっていくのは納得できます。
それに加えて、「移動中にあったこと」が、歩く人に作用しているのも大きいと思います。
外に出ると人と出会いますし、出会った人とやり取りをする中で、いろいろなことを体験し、刺激を受け、感じる。
その積み重ねがその人をより前向きに、より豊かに成長させていくようです。
歩き方を変えたら、その人の生き方も変わるなんて魅力的なことだと思います。
魔法をかけるのは歩行訓練士ではなく、白杖とともに歩く人自身です。
白杖が必要なんだろうけど、持つのをためらっている方がいましたら、ふさわしい白杖を一緒に選びませんか?お気軽にご相談ください。
編集後記
3/1(日)、設立15周年の感謝を込めてアイライトミニコンサートを開催しました。
リコーダーの英村先生、コーラスの安永先生のご指導のもと通所メンバー、スタッフ、ボランティアさんたちが練習を重ねて素敵な歌と演奏を聴かせてくれました。
10/11(日)のアイライトフェアでも演奏予定です。
医療講演や「神戸市の視覚リハ訪問指導」をテーマにパネルディスカッションを計画しています。 (和田)
本分終了