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神戸アイライト通信NO.32
発行:2015年 1月

◆訪問指導(個別指導)事業の今後について

理事長 森 一成

1991年に神戸・兵庫に訪問指導事業がないことを知りました。
その時に将来、神戸に訪問指導事業を実施する地域拠点が必要だと思いました。
2015年は阪神大震災20年でもあります。
震災当時、全国から歩行訓練士がボランティアで神戸に来ました。
避難所や変貌した町で緊急歩行訓練等に従事しました。
しかし彼らが戻った後に、それを引き継ぐ訪問指導事業はありませんでした。
常勤専任の訪問指導員(歩行訓練士)は皆無だったのです。
1990年代末にはNPOが各地に芽生えました。
その中に訪問指導を含めて歩行訓練士が支援活動をするNPOもありました。
そういう状況のもと1999年4月にNPOとして神戸アイライト協会が活動開始しました。
当初から訪問指導事業の確立、常勤専任の歩行訓練士の配置が協会の大きな目標でした。
啓発と思いボランティア的に神戸市で実施した歩行訓練は15年半で1400回を超え、近年は年140回ペースです。
しかし常勤専任の訪問指導員(歩行訓練士)は現在もおりません。
もうボランティア的に実施するのは限界に来ています。
パソコンの訪問を含むボランティア的な個別指導も通算約1200回、近年は年180回ペースです。
こちらも近い将来、現状のままでは存続が困難になる可能性があります。
他の大都市と同様に歩行・パソコン等の視覚障害リハビリテーションの常勤専任の訪問指導員の配置が必要です。
訪問指導の安定的存続に向けて多くの方々といっそう協力して取り組みたいと思います。
皆様の理解とご協力、ご支援を今後ともより一層よろしくお願い申し上げます。

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◆ロービジョンケア、最近の話題

副理事長 山縣祥隆 (山縣眼科医院)

新年、あけましておめでとうございます。
お元気でお過ごしですか?
昨年、神戸アイライト協会は設立15周年を迎えましたが、私のロービジョン活動は協会の活動期間とほぼ同じです。
私は1997年にロービジョンケアの勉強を始め、1998年に兵庫医大眼科でロービジョンクリニックを開設しましたが、神戸アイライト協会はその翌年に設立され、私は設立当初から協会の活動に参加することができましたし、2000年には「日本ロービジョン学会」の創設に関わり、現在まで理事として学会活動を行って来ました。
さらに同年、兵庫県ロービジョン講習会を始め、県下の眼科医療機関でのロービジョンケアの普及活動を行ってきました。
つまり眼科サイドからみますと、神戸アイライト協会は日本のロービジョンケアの時流にのって設立され、活動を続けてきたことになります。
あれから15年、ロービジョンケアの概念は眼科医の間にも随分浸透し、ロービジョンケアを行う眼科医もかなり増えてきましたが、決して視覚に障害をもつ方々が住みやすい社会、満足のいく医療・福祉体制とは言えないのは残念です。
我々、眼科医の力不足を痛感します。
社会を変えるためには行政を動かさなければなりませんが、行政を動かすためには、単に障害者は不幸だ、不自由だと訴えるだけでは全く効果がなく、その不自由さや不幸の程度を科学的に正しい方法で数値として表し、評価してもらわなければなりません。
その中で日本ロービジョン学会は、ロービジョンケアを行った際に医療機関が受け取ることが出来る対価を厚生労働省に認めてもらい、また視覚障害者が必要とする遮光眼鏡についても病気の区別なく金銭的補助が受けることができるよう法令を改正して頂きました。
学会では引き続き、視覚に障害を持つ方が住みやすい日本にするため、行政に対する要望を送り続ける所存ですが、我々の活動の原点は障害を持つ方のご意見、訴えです。
日々の生活で不自由したこと、納得のいかないこと、どのような些細なことでも結構ですので、遠慮なく協会にお寄せ下さい。
ご意見を学会活動に反映し、障害をもつ方が住みやすい社会環境、福祉制度の整備を目指して活動する所存です。
今年が皆さまにとって幸せな一年になりますよう心からお祈り申し上げます。

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◆「パソコンの個別講習を覗いてみると・・・」

IT事業部 部長 飯山知子

通常、講習会ではテーマが決まっていて講師の組み立てた内容に沿って講習が進んでいきますが、個別での講習は全く違います。
一人一人、内容も進み方も全く違うのです。
今回は普段知ることの少ない個別講習の部屋を3部屋覗いてみたいと思います。
1部屋目、Aさんは鍼灸院の税務書類を作成する為に個別講習を受けられました。
ご本人からのご希望で「教えすぎないで!」とのことでしたので、基本操作を講習して以降はご自身でパソコンの状況を把握する操作や管理する為に必要な操作を中心に行い、Excelの内容については講習しませんでした。
ところが、「予定収入支出管理表」「治療費明細書」「月別出納表」など様々な表を作成されました。
こちらの考え付かない発想で工夫を凝らした表になっていました。
講師が教えすぎると想像力が働かなくなる、面白さを奪ってしまうかもしれないことを教えていただいた貴重な体験です。
2部屋目、Bさんは周りの勧めでパソコンを始められました。
基本操作を講習後、「パソコンでしたいこと」をお伺いすると「特にやりたいことがない」というご返答でした。
質問を変えて「生活で困っていること」とお伺いすると「時刻表が読めない」「ニュースが分からない」「郵便物がわからない」など色々出てきたのです。
パソコンでそれらの困っていることが解消できることをお伝えすると驚いていらっしゃいました。
もちろん講習を行い解消されました。
それからはパソコンで出来るかもしれないという発想が持てるようになったそうです。
3部屋目、Cさんはご家族から「今は家族が読んでいる新聞を自分で読むことが出来ないか」というご相談から始まりました。
ご高齢でこちらに来ていただくことも難しい状況です。
そこで「新聞を読む」ことだけに操作を絞り、パソコンを起動すると新聞が開くように設定しました。
Cさんにとってはパソコンではなく新聞を読む機械のような感覚です。
パソコンは便利な道具ですが、どう使うかは使う側が決めるのです。
3部屋しか覗くことが出来ませんでしたが、内容も進み方も全く違っていますよね。
個別講習は十人十色です。
パソコンは苦手・高齢だから関係ない、などと距離を置いている方も、もしかしたらその方だけのパソコンの使い方があるかもしれませんよ。

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◆設立15周年記念 アイライトフェア2014開催

事務局長 和田眞由美

11月9日(日曜)神戸市立葺合文化センターにおいて「見えなくても見えにくくても住みやすい街にするために」をテーマにアイライトフェア2014を開催した。
昨年に続いて雨の中、100名を超える方が会場に集ってくださり、「視覚リハの訪問指導の現況と課題」について理解を深める機会とした。
歩行訓練士の伊東良輔氏(社会福祉法人 北九州市福祉事業団 福祉用具プラザ北九州)より、北九州市の地域生活支援事業としておこなっている「中途視覚障害者緊急生活訓練事業」について紹介いただいた。
北九州市からの委託で1998年に兼任者1名でスタート。
当事者からの要望の高まりにより拡大し、今は専従の歩行訓練士3名体制。
当初は歩行訓練のみであったが今は歩行訓練を柱に日常生活動作訓練、コミュニケーション訓練(点字、パソコン)、通所の形で社会参加訓練をおこなっている。
自己負担はなく、朝起きてから寝るまでに不自由を感じることをどのようにすれば良いか、訓練士がその方の自宅へ訪問して共に考える、その日から生活の質の向上につながるというスタンスでおこなっているとのことであった。
同じく歩行訓練士の速水洋氏(一般社団法人 大阪市身体障害者団体協議会)より1972年から大阪市の委託で実施している「在宅中途失明者訪問指導事業」について紹介いただいた。
当初は指導員2名でスタート、1984年より3名体制。
対象者は市内在住・市内在勤、内容は歩行訓練、コミュニケーション訓練、日常生活訓練。
申込みは電話一本、面接も訪問でおこない、回数や期間の限度はない。
弱視の方で白杖の使い方だけなら1回で済むこともあり、ずっと外に出てなかった方が電車に乗って出かけたいということなら何年も続く場合もあるとの報告であった。
利用者の立場から大阪市在住の森田儀子氏は、歩行だけでなくパソコンやプレクストーク、携帯電話の使い方も教えていただいたとのこと。
大阪市の訪問指導の良いところとして「無料」「面接のみで手続き簡単」「回数制限なし」「歩行だけでなく日常生活訓練もあり」「必要ならば受けなおすこともできる」という点をあげられた。
ヘルパー利用は時間に制限があり選んで使っているが、訓練を受けて自分で歩けるようになると自分で行きたい所へ行けるメリットがある。
訓練を受けてとてもラクになったと笑顔で語られた。
兵庫県伊丹市において「訪問型歩行訓練事業」の実現に尽力された大村直美氏より、その経緯についてお話いただいた。
ピアサポーターとして相談に関わった方が外に1歩足を踏みだすのが恐ろしく自宅にこもっていたため、その方を外へ連れ出したいという思いで(2007年頃に1年半だけ兵庫県の事業でおこなっていた)歩行訓練を勧めた。
その訓練についていくと最初はヨロヨロとした歩き方だったが訓練が終わる頃には、しっかりと地面に足をつけて歩いていた。
自信を取り戻し、自立しようと心に決めるまでになっていた。
これを見て「伊丹に歩行訓練が欲しい」と思い、行政へお願いだけでなく、自分たちでもやれること、その姿を見ていただくため神戸アイライト協会の協力のもと伊丹市でロービジョンサポートフェアを開き、行政の方にも拡大読書器や音声パソコンなど見ていただく場を作った。
「再度の人生を歩むための光をください」と申し出てから4年半かかったが自分たちを理解してもらう努力をし、行政がご理解くださったことに感謝している。
市内在住、10回まで可能であり1回1600円の負担があったが初めての方は無料になった。
今後は歩行だけではなく料理や音声機器などトータルサポート的なものを求めていきたいと熱く語った。
神戸市在住、当協会で歩行訓練を受けた熊澤明氏は、地震が起きて避難する時にヘルパーに電話するだろうか? 最低限でも自分の身を守ることができる、携帯電話が使えれば安否確認もできる。
訪問歩行訓練は命にかかわる、自分の命をつなぐためにも必要であると訴えた。
訪問訓練の良さについて速水氏からは「こちらから行くことが大事、こっちにおいででは、なかなか出てこれない」、伊東氏からは実際の事例をあげて「一対一の訓練も大事だが家族のほうが長くずっと一緒にいる方なので、家族への働きかけもできる」という点があげられた。
神戸市において15年間、当協会が仕事の合間に訪問歩行訓練を奉仕に近い形でおこなってきたが限界が近づいている。
大阪や北九州でのお話から歩行だけでなく日常生活全般の訓練が有効であることが伺えた。
見えにくくなることで色んなことを諦めたり生きることまで諦めさせてはいけない。
神戸市でも約7000人の視覚の身体障害者手帳所持者があり、他の大都市圏と同様、訓練士が訪問で対応するために必要な人件費確保が急務である。

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◆安全に、楽しく歩くことについて

歩行訓練士 住吉 葉月

最近の"歩行訓練のひとコマを綴ってみたいと思います。
訪問の歩行訓練は、ご自宅周辺など希望する場所で練習できるのが特徴ですが、訓練の様子をご家族の方にも見てもらえたり、一緒に参加してもらえたりするというメリットもあると思います。
70代男性の歩行訓練で、三宮駅周辺の移動を確認するため待ち合わせしたところ、奥様も同行してくれました。
奥様は「一緒に歩く時、肩に手を置いてもらうとすぐに離れるし、腕をつかんでもらうと痛くなる。
いい方法が知りたい」とのことでした。
普段一緒に歩いている様子を見せてもらったところ、ご主人の腕に奥様がつかまる形となりました。
見えにくい・見えない方をガイドする「手引き」の基本の姿勢は、手引きをする側が半歩前に立ち、ひじの上を持ってもらいます。
この形をとることで、手引きを受ける側の安全が確保できます。
今回のご夫婦の場合、立つ位置が逆になるし、急に人や自転車が横切った場合など立ち止まることが難しいかも…と思いながら、理由をうかがうと、奥様も足腰が不安定なので、ご主人の腕につかまりながら歩き、言葉で状況の説明をしているということでした。
奥様の介助をご主人が、ご主人の介助を奥様がして、お互い支え合う形で歩いているということになります。
なるほど、そういうこともあるなぁと思いました。
基本はもちろん大事ですが、今回はお互いが楽で、安全に歩けることが第一だと思い、この形でいきましょうということになりました。
奥様にも、歩行訓練の様子を見てもらったことで「段差などある所ではいつも腕を引っ張って止めていました。
まず立ち止まり、状況を伝えればよいんですね」と理解してもらえたようでした。
神戸アイライト協会では白杖の操作方法だけでなく、ご家族やガイドと安全に歩くためのアドバイスもしています。
お気軽にご相談ください。

歩行訓練体験談のページ★当協会のホームページでは「歩行訓練士スーちゃんと神戸を歩こう!」という街歩きコラムなど、アイライトの活動の様子を発信しています。
ぜひご覧ください。

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【 編集後記 】

1995年1月17日、阪神淡路大震災発生。
早朝まだ暗い中、突然の大きな揺れに何が起きたのか理解できず、昼過ぎに電気が回復し、テレビで映し出された神戸市内の光景に言葉を失いました。
あれから20年が経ち、建物や道路は修復されましたが、大切な人を失った悲しみを癒すには、まだ時間がかかるのかもしれません。
1月16日(金曜)にメモリアルイベントとして講演会をおこないます。
2次避難所の整備は進まないままですが、助け合う心は持ち続けていきたいものです。

(和田)

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