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神戸アイライト通信NO.30
発行:2014年1月

◆2014年もよろしくお願いいたします

理事長 森 一成

神戸アイライト協会は2014年3月末で、活動開始から15年になります。毎年ながら改めて多くの皆さんのご協力、ご支援に感謝です。年々変動する協会ですが、相談事業(神戸市委託の視覚障害者トータルサポート事業)が重大な局面を迎えています。2007年の事業提案当時から相談件数が倍増し、相談後のパソコン指導や歩行指導のニーズも急増しています。そういった中、予算的には非常に厳しい中で事業展開しています。2013年9月には神戸市議会でもとりあげられ、当時の矢田神戸市長が相談支援体制の充実を図る必要があると答弁していただきました。そのための体制の強化、各種施策にも触れていただきました。充実した事業体制を作れる予算措置を期待しています。

訪問指導、通所、行事等も新たな展開!
兵庫県西部の宍粟市と委託契約ができ、訪問歩行訓練事業が始まりました。このように兵庫県内で歩行訓練等の訪問指導の問い合わせも増えています。通所施設のアイライト新神戸ではコーラスも始まりました。ITハンドファームでもホームページの作成管理点字用紙再利用などを活発に行いました。行事も他団体へのブース協力、福祉勉強会・ミニコンサート等が増加しました。皆さんの参加を2014年もお待ちしています。

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◆ 最近のロービジョン関係の話題

副理事長 山縣祥隆(山縣眼科医院)

朝晩が急に寒くなってきましたが、お元気でお過ごしのことと存じます。今回も「ロービジョン最近の話題」をふたつお届けします。
まず身体障害者等級の判定基準です。視力について、例えばA氏、矯正視力が右(0.6)、左 (0.02)ですと6級ですが、右(0.2)、左(0.03)のB氏の場合、誰が考えてもA氏より見にくいはずなのに6級には該当しません。また、そもそも両眼の視力を足し算して判定することに疑問をもつ声が多いのです。視野についても、すべてのタイプの視野障害に公平な判定基準とは言えず、多くの問題点が指摘されています。この判定基準の見直しについては日本眼科学会日本眼科医会日本学術会議日本ロービジョン学会がそれぞれ検討を始めていますが、なかなか議論が進みません。例えば視力や視野が障害されるとどの位、作業能率や生活の質が低下するかという視能率の考え方は、日本の視野の判定基準に一部導入されていますが、この考え方を視力、視野すべての判定基準に採用してはどうか、という議論があります。また現在、判定基準には国内でも地域差があり、これを解消すべきだという意見も出されています。厚生労働省の意向は全く分からないのが現状ですが、いずれ判定基準の改定に向けての諮問が来る日を想定して、検討を重ねています。
次は前回にもお話ししました「iPS細胞」を用いた網膜再生医療についてです。今回、iPS細胞から作成した網膜組織の移植手術を受ける加齢黄斑変性症の患者さん6名が選ばれました。手術は来年に行われる予定ですが、今回の手術の目的は、視力の回復ではなく、iPS細胞を用いた場合に「ガン化」が生じないかどうかを確認すること、つまり安全性の確認であり、本格的に視力の回復を図る臨床研究は、まだまだ先になります。私にも患者様から色々と質問があり、どうしても移植手術を受けたいので神戸市に転居したいとのお話もしばしば聞かれます。しかし先に述べたような長期的な計画ですので、どうぞ冷静に研究の進み具合を見守って頂きたいと思います。

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正会員会費、賛助会費 改定のお願い

理事長 森 一成

いつも神戸アイライト協会に温かいご支援をいただきましてありがとうございます。おかげさまで15年目になり、多くの方にご利用いただけるようになりました。とりわけ通所施設運営の傍らでお受けしてきた相談が急増し、昨年度は1,167件のご相談に対応しました。相談は無料で、現在、神戸市より委託いただいています。市外からのご相談も同様にお受けしておりますが、公的補助はありません。相談の続きには歩行訓練パソコン講習があり、こちらも公的な補助が無いに等しい中で続けて参りました。このまま需要が増え続けるとボランティア精神では乗り切れなくなるというところまで来ています。
神戸市との交渉も引き続きおこなっておりますが、急増するニーズにお応えしていくため、今一度、皆様の力強いご支援をお願い申し上げます。消費税増税などお財布事情の厳しさが予想される中、誠に恐縮ではございますが、下記のとおり2014年度分(2014年4月~2015年3月分)より正会員会費、賛助会費を改定させていただきます。

現行2014年度分から
正会員会費2,000円⇒3,000円
賛助会費1口2,000円から⇒1口3,000円から

NPO法人から認定NPO法人をめざして、事業整備を進めております。活動継続のため、サポート充実のため、何とぞご理解をいただければ幸いです。ご寄付も合わせまして、ご無理のない範囲で今後も継続して神戸アイライト協会を支えていただけますよう、よろしくお願い申し上げます。

このたび募金箱の準備ができました。募金箱の設置にご協力いただける眼科、事業所、商店を募集しております。こちらよりお問い合わせください。

神戸アイライト協会 事務局長 和田
電話 078-252-1912

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◆ アイライトフェア2013開催

事務局長 和田 眞由美

11月3日(日曜・祝日)神戸市立葺合文化センターにおいて、視覚障害者のトータルサポートにおける相談支援の大切さをテーマに「アイライトフェア2013」を開催した。あいにくの秋雨にも関わらず、スタッフ含め参加者は110名を超え、各地の現況報告と課題について共有した。

開催にあたり眼科医の高橋政代先生からのメッセージが伝えられた。見えない見えにくい患者さんには治療だけでなくロービジョンケアが必要だとお考えであること。当協会の取り組み(専門相談、歩行訓練、音声パソコン指導など)については「生活を便利にし、生活の質を向上させるもの」と評価をいただき、見えない、見えにくい方々へは「今できないことをあきらめることなく、できることからはじめてください。きっと明るい未来が拓けると思います」と、参加者ひとりひとりの心に温かく響く言葉であった。

基調講演をいただいた日比野清氏(元 佐野短期大学教授)は、ご自身も視覚障害者であることと長く視覚障害リハビリテーションおよび相談業務に携わってこられた双方の立場からお話をいただいた。その概要は以下の通りである。

「見えなくなったとき必ず相談にくるか?まずない!」
医療、福祉、施設、教育、就労機関との連携をどのようにもっていくのか?特に医療と視覚障害リハビリテーションをおこなっている機関との橋渡しをスムーズにおこなうことによって、どれだけ早く社会参加させることができるようになるか計り知れないものがある。アウトリーチが重要である! 地域に出かけていってニーズを掘り起す。困っている人がいる、困っている人がどうしているかわからないでいるんだからこちらから接近していき、いち早く発見し次に繋ぐ。地域にでて医療との連携をどのように結び付けていくかがポイントとなる。そこが果たせれば今、視覚障害になっている方、家にこもってしまっている方にとって、どれだけ助かるかわからない!視覚リハに橋渡しをしていく、リハを受けている中で、さらに地域で生活をし始めたときに本当に相談できるのが「視覚障害者に対する専門相談員」である。

パネルディスカッションでは市の事業として視覚障害専門の相談事業をおこなっている仙台市、京都市から相談員の方々をお迎えし、神戸も加わり各地の現状および今後の展望について討議をおこなった。

 阿部直子氏(NPO法人アイサポート仙台)は、2001年から仙台市が独自におこなっている「仙台市中途失明者生活支援事業」について、現在の相談員が3名とも訪問に出て事務所にいない時もあるというほど活発に動かれている様子を話された。平均して月55件の相談のうち訪問が50件。訪問先は御自宅、病院、役所窓口や年金事務所など。相談支援の役割については「個人が抱える困りごとをいかにトータルで生活再構築設計していき、必要なことを必要なところに繋げていくか」それから「各地域での課題をご本人や家族のことだけに焦点を当てるのではなく、眼科医に繋がる機会、ケアマネージャーに情報を知ってもらう機会をもうけるなど市民に啓発、いろんなところに働きかけながら地域トータルで見る」など、大きく2点をあげられた。

2010年のアイライトフェアでも登壇いただいた高間恵子氏(京都府視覚障害者協会)からは1978年からおこなっている「京都市中途失明者指導員派遣事業」について、相談員5名で昨年度の面談件数956件、うち600来館、300強が訪問という報告があった。訪問先は自宅、病棟、施設、年金事務所、福祉事務所、生活保護の申請に同行するなど仙台同様、見えにくくなって動きが取れない視覚障害者にとっては心強いサポート体制が伺えた。
「福祉・役所・医療」との連携を重要と意識され働きかけをおこなわれた結果、昨年度新規213人中、62%の方が「福祉・役所・医療」それぞれからの紹介で早期に繋がることができたとのお話をいただいた。
 当協会理事長の森は神戸市委託の「視覚障害者トータルサポート事業」について、この事業の原資が一時的な寄付金であり継続の保証なく、それから現在、相談員2名分の予算がNPOの基準値で一般行政職なら1名分という中で相談件数の増加に対応しているという厳しい現状を訴えた。神戸市との交渉も並行しておこない、まだ出会っていない多くの方がいることを心に留め、少しでも活動を広げていくよう努めたいとの決意があった。
 日比野氏は「地域格差」の問題について、今日をきっかけに連絡会を作って全国に呼びかければ必要性を感じているところがたくさんあると思う。そこで実績を積み上げて対国と交渉していけば、相談員の中に視覚障害専門職の認定というものが出来なくはないという考えを示された。

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◆ 街を歩いて感じること

歩行訓練士 住吉 葉月

今回は、歩行訓練を通して感じていることを綴ってみたいと思います。
歩行訓練では、白杖を操作して目的地まで安全に移動するための練習、アドバイスを行います。白杖の基本操作、通勤通学ルート、買い物コース、健康維持のための散歩など訓練内容は様々です。
 白杖を携えて外に出かけてみると、たくさんの人達と出会います。最近、三ノ宮駅周辺など混雑した場所を歩く際、スマートフォンを見つめながら歩く人が多く、白杖を持っていても気付いてもらえず、非常に困っています。以前の携帯電話の時よりも画面に集中している気がします。見えない見えにくい方が白杖で最大限の対策をしても衝突のおそれがあります。憤る思いもありますが、周囲に配慮できない人がこんなにもいるのか…と悲しい気持ちになります。
うれしい気持ちになる場面もあります。これも最近の訓練での出来事でしたが、住宅街を移動する練習の最中、集合住宅の植木の剪定作業をしている作業員さんが電動の草刈り機を止めて「音がうるさくないですか?先に遠い方からしますね」と作業箇所を移動してくれたのでした。剪定作業は普段よくある街のワンシーンですが、あの電動のギュイーンという音は、音を頼りに歩く方達にとっては不安や妨げになるかもしれません。作業中であっても、私達が練習している様子に気をかけていただき、道を譲っていただいたこと、とても温かい気持ちになったのを覚えています。
外を歩くと、障害物などの歩きにくい状況が存在することも事実です。しかしそれ以上に、歩いている途中で感じる花の香り、風の冷たさなどの季節の移り変わり、夕飯の支度の美味しそうなにおい、そして時折り触れる人の心の温かさ…目的地に到着することと同じくらい素晴らしいことに出会える楽しみがあります。
これからも、街と多くの白杖ユーザーをつないでいく役割として、素敵な経験を共有しながら、たくさん歩いていきたいと思っています。

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