以下本文

神戸アイライト通信 NO.41 発行:19年8月


20年に感謝を込めて

理事長   森 一成

当協会発足から今年2019年4月1日で20年になりました。当協会は神戸、兵庫に訪問型専任の歩行訓練士がいない状況を改善したいとの思いで、1999年4月に任意団体のNPOとしてスタートしました。小舟に一人での船出でした。しかし活動を開始すると多くの協力者も現れてくれました。現在は常勤・非常勤20人乗りの舟になって進んでいます。そして多くのボランティア、正会員と賛助会員の皆さんがスタッフを支えてくれています。改めてご支援ご協力くださる皆様に感謝したいと思います。
20年の歩みの中でロービジョン・視覚障害の方を支援する地域センターの必要性も痛感しました。地域センターは中山記念会館移転によりハード面が整い、神戸市と通所施設開設、ロービジョン・視覚障害専門相談事業(トータルサポート事業)での協働によりソフト面も整備されつつあります。重視してきたガイドヘルパー等の支援者養成も中山視覚障害者福祉財団と協働する講習会等で養成し地域で増員しています。そして2017年の神戸アイセンター病院開設等もあり、ロービジョンの方のニーズも顕在化し増加しています。その対応体制は、スタッフ数等まだ十分ではありません。関係者の皆さんと協力し改善しながら今後も大海原を進んでいきたいと思います。
7月3日にはアイライト開始時に出会った前川裕美さんのコンサートを開催しました。前川さんに20周年を祝っていただき、協力していただいた前川さんをはじめ皆さんに感謝するとともに今後に向けて身の引き締まる思いでもありました。

ページトップへ

<2018年度 まとめ>

事務局長 和田眞由美

1.公共交通機関と連携した視覚障害者の安全確保実践研修事業
兵庫県からの委託を受け、公共交通機関と連携した視覚障害者の駅ホーム事故を防ぐための活動をおこないました。
 声かけ啓発チラシを作成し、鉄道各社のご協力を得て各駅にてチラシを設置していただきました。また交通関係の相談対応、駅での歩行訓練(神戸市外)、JRの安全対策への協力をおこないました。
 関連してJR兵庫駅においてホームを使っての緊急退避の方法について体験させていただきました。駅ホームは予想以上に高く、転落した場合に一人であがるのは困難であることから、実際にホームの下に降り、手探りでホームの下にもぐりこみました。まずは転落を防ぐこと、万一の場合はホーム下に退避することで命を守ってほしいと願います。

2.視覚障害リハビリテーション研究発表大会in神戸 開催協力 
神戸国際会議場および神戸国際展示場にて、9/14から9/16の3日間に渡って開催されました。メイン会場での講演やシンポジウムと並行してサブ会場での機器展示や様々なイベント企画もあり、3日間で約3500名の来場者を迎え、大盛況の中、のべ200名のボランティアさんの協力もあって無事に終了しました。大会前には中山記念会館において「視覚に障害のある方の介助講座」を開いて、公共交通機関関係者等に介助の方法をレクチャーし、また神戸ポートピアホテルにおいてもホテルスタッフの方々を対象に介助講座をおこないました。神戸での大会開催を機に視覚障害への理解が深まり、行政も交えての支援体制の充実を更に進めて参ります。

3.視覚障害者就労促進フォーラム・就労支援セミナー・職業講習 開催協力
関東を拠点に活動を展開されている視覚障害者パソコンアシストネットワーク(SPAN)に協力し、神戸においてフォーラム、セミナー、そして職業講習が開催されました。SPANの理事長で講師を務められた北神あきら氏の非常に高いパソコンスキルは受講者の方々だけではなく、当協会のスタッフにとっても貴重な学びの場となりました。今後のIT事業に大いに活かしていきたいと思います。

おかげさまで設立20周年を迎えることができました。
ご支援ご協力いただきました皆様方に厚くお礼申し上げます。
これからもどうぞよろしくお願い致します。

ページトップへ

石突きのお話

歩行訓練士 住吉 葉月

今回は、「石突き」のお話です。
白杖ユーザーならご存知の方も多いと思いますが、白杖の先端には白いパーツが付いています。これは石突きとかチップと言われていて、路面の情報をユーザーに伝える、とても重要なパーツです。形も細長いもの、マシュマロみたいなもの、ローラー付きのもの、キノコみたいなものなど、白杖操作のスタイルに合ったものを選ぶことが可能です。
この石突き、路面で常に削られているものですから、歩いているうちに少しずつすり減ってきます。そのまま使っていると、路面の情報が拾いにくくなったり、白杖の本体まで削られてしまったりして、移動のパフォーマンスが低下するおそれがあるので、できるだけ早めの交換をお勧めします。
歩行訓練士をしていると、この石突きの交換をすることがあります。
ある春の夕暮れ、男性Aさんの歩行訓練のことです。仕事場から、趣味の楽器を練習する場所まで移動の練習をした後で、石突き交換をすることになっていました。
Aさんは1本の白杖を長く使い続けていて、石突きはかなりすり減っている上に、白杖本体まで斜めに削れていました。新しい石突きをつけるためには、斜めになった部分をやすりで削って平らにする必要があります。「削ると粉が散るので、表で作業しますね。Aさん、その間どうぞ練習しててください」
外に出て白杖と格闘していると、サックスの音色が流れてきました。(確かアルトサックス、だったと思います)
「あれ、私、なんか素敵な場面にいるかも?」と一瞬だけ混乱しました。春の夕暮れ、サックスの調べをBGMにして、白杖にやすりをかける。こんなに美しい石突き交換は、もう二度とはないだろうと思えるくらいのワンシーンでした。汗だくにはなりましたが、なかなかの仕上がりになったと思います。
白杖や石突きの形状によって、全ての石突き交換ができるとは言えませんが、「白杖で歩いてて、杖先が変な音がする、路面の状況が分かりにくい」と感じたら、まずはご相談ください。コンディション良好な石突きで白杖歩行が快適になりますよ。

ページトップへ

特定非営利活動法人 神戸アイライト協会 20年のあゆみ

設立者 森 一成(現理事長、元神戸市立盲学校教諭、歩行訓練士)

・神戸に歩行訓練士の訪問指導事業と大阪や京都のような活動拠点がありませんでした。

・1995年(平成7年) 1月 阪神淡路大震災発生
 建物が倒壊、道が寸断され、視覚障害者は頭の中に描いていた地図を失いました。被災された視覚障害者の支援のため全国からたくさんの歩行訓練士が集結し、救援と支援活動にあたってくださいましたが、応援の歩行訓練士が帰ったあとを引き継ぐところがありませんでした。
・「ないなら立ち上げよう!」
 神戸市立盲学校を退職し、1999年(平成11年)4月、神戸アイライト協会を設立。PHS電話を片手に自宅の台所からのスタートでした。そして現会長の新阜義弘、現副理事長の山縣祥隆、今は亡き木村文子さんとの出会いがあり、4人で小さな一室を借り、模索しながら歩き始めました。

・2000年(平成12年)5月 中山視覚障害者福祉財団主催 パソコン講習開始

・2002年(平成14年)4月 小規模通所施設「アイライト新神戸」開所
 通所施設運営の傍ら、相談にも対応しました
・2003年(平成15年)2月 特定非営利活動法人 法人格を取得

・2006年(平成18年)4月 小規模通所施設「ITファーム」開所

・2007年(平成19年)4月 中山視覚障害者福祉財団によって中山記念会館がオープン、会館内に拠点を移しました

・2008年(平成20年)4月 神戸市委託 トータルサポート事業開始 相談件数 798件(うち神戸市内546件)
・2009年(平成21年)4月 通所2施設を法定施設へ移行完了 (地域活動支援センター・就労継続支援B型)           
・2015年(平成27年) 協会設立から17年目、ようやく兵庫県で初めて神戸市に常勤専任の歩行訓練士配置予算(1名)がつきトータルサポート事業で訪問できるようになりました

・2017年(平成29年)12月 ポートアイランドに神戸アイセンターがオープン
 週1回、相談員を複数派遣 相談対応件数の更なる増加
 相談件数2791件(うち神戸市内1694件)※2018年度実績

・2019年(平成31年)4月1日 設立20周年を迎えることができました

ページトップへ

【 編集後記 】

平成が終わり、令和という新しい時代が始まりました。おかげさまで神戸アイライト協会は20周年を迎えることができました。正会員ならびに賛助会員の皆様方のご支援に厚く感謝申し上げます。歩行訓練や通所メニューの講師を担ってくださる先生方、ボランティアの皆様、関係各所の皆様にも助けていただき成り立っている活動です。まだまだ微力で足りないところが多々ございます。役員とスタッフ一同、気持ちを新たに進んで参りますので、更なるご支援ご協力をよろしくお願い申し上げます。10月27日には感謝を込めて20周年記念アイライトフェアを開催いたします。

(和田)

本分終了