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神戸アイライト通信 NO.53号 発行:2025年8月


神戸市の公共施設に『視覚障害者サポートセンター』を!歩行訓練等の視覚リハが未来の神戸でも安定して続きますように 

理事長  森 一成

2024年12月末に神戸市が視覚障害者サポートセンター運営事業者の公募を発表しました。歩行訓練やICTサポートなどの視覚リハ事業です。事業名称、事業内容、予算が少し変ったものの、依然として委託金額が少なく、アイライトで受託しても大幅赤字になる状況は同じでした。3年前の神戸市の事業変更による委託費の大幅な削減のため、アイライトの事業収入が大きく減少しました。スタッフの拡充、世代交代が難しく、高齢化が進みました。現在、30%が70代、75%が60代以上になり、このままだと5年後には64歳以下のスタッフは5名だけになります。事業に必要な若い専門職を安定的に雇用できる見通しもありません。私たちが受託を続けても近い将来に事業維持が困難になるのは確実です。それだけでなくアイライト自体の存続も危ぶまれます。そして視覚リハ事業は、地域の未来にとっても、他の政令市のように公共施設での安定的事業展開が望ましいとの思いがありました。この状況下、私たちは昨年末から年始にかけて、スタッフや役員で何度も話し合いを重ねました。そして最終的に今年度末(2026年3月末)で神戸市の事業から撤退し、事業主体を本来あるべき神戸市に返還することを決断しました。今年4月から利用者、関係者への説明を行っています。
以下、説明の配布文から一部抜粋します。
「しかし新しい支援体制を創るためにも、アイライトが次の段階に移行するためにも、そして、アイライトを利用してくださっている皆さんにも、準備をする時間が必要なのではないかと考え、2025 年度の一年間に限り、事業を継続するという決断をしました。この1年間という時間を使って、みんなで神戸市ひいては兵庫県における視覚障害福祉の新たな形を模索していきたいと考えています。その中心は、地域に住む皆さん一人ひとりと、地域の市役所や県庁です。アイライトは、今後、通所事業や講習事業などに専念しながら、地域の視覚障害福祉を別の角度から支えられるように、自分たちのやるべきことをしっかりと見据えていきたいと思います。皆さんには、心配も負担もたくさん掛けることとなるかもしれませんが、この過程がよりよい未来に続いていくために欠かせないものだと思っています。ぜひ、ご理解とご協力をお願いします。」(抜粋は以上です)
当然、簡単なことではありませんが、視覚障がい者の生活と生命を支える視覚リハ事業をおこなう『視覚障害者サポートセンター』が、公共施設の中で安定した持続可能な事業となるよう、皆さんと求めていきたいと考えています。未来の視覚障がいの仲間のために、市民・県民のために多くの皆さんと共に力を合わせていきましょう。

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2024年度まとめ

事務局長 和田眞由美

1.公募事業の受託3年目終了! 大きな決断をしました!
当協会の中心的事業である相談を初めとする視覚障害リハビリテーションについて、神戸市より公募事業を受託し「神戸市視覚障害者生活支援事業」および「神戸市視覚障害者生活訓練事業」を実施しました。充分な対応体制確保のための適正予算を求めましたが変わらず、委託費は生活支援事業が690万円、生活訓練事業が660万円。不足分として約600万円を多くの皆様から賛助会費とご寄付とカンパで助けていただきました。このまま、この事業を受託することが、神戸市の視覚障がい福祉、そして神戸アイライト協会にとって本当に良いことなのか?と考え、2025年度の公募事業には手を挙げませんでした。しかし他からも手が挙がらず再公募となり、「2025年度を最後に」と申し添え受託いたしました。神戸市にNOを示すことで、より充実し安定的に継続できる事業へと変わっていくことを願っての決断です。市外相談についても兵庫県の言い分は「相談事業は各市町で実施するもの」と他人事です。いつ誰が視覚障がいになるか、わかりません。また、他臓器の疾患や事故から見えなくなったとの相談も次々といただいてます。神戸市民、兵庫県民のために行政は、しっかりと現状を把握し早急に対応すべきで1分1秒待ったなしです。
2. 山縣副理事長は勇退、代わって沖久理事と藤原理事が副理事長に就任!
神戸アイライト協会設立当初から長く副理事長を務めていただきました眼科医の山縣祥隆理事が3月1日をもって退任されました。眼科医療と視覚リハをつなぐスマートサイトを日本で初めて兵庫県で実現し、リーフレット「つばさ」誕生に尽力されました。今後は相談役として助言いただきます。代わって、沖久正留理事、藤原奈津子理事を互選で副理事長に選任しました。現任の飯山副理事長と3人体制で、森理事長を支え、数々の難題に取り組んで参ります。
3. リコーダー 英村先生 ご指導ありがとうございました!
2002年(平成14年)4月に小規模通所施設として「アイライト新神戸」が開所しました。当初からリコーダー指導で大変お世話になった英村先生とのお別れの日が突然にやってきました。まだ信じられない思いですが、長年のご指導に心より感謝を申し上げ、ご冥福をお祈りいたします。ありがとうございました。ご家族様により後任の先生を繋いでいただけました。リコーダーの音色が天に届き安心していただけるよう、アイライトアンサンブルの音楽活動は続きます。

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神戸アイライト協会の現状とこれから

副理事長 藤原 奈津子

見えない、見えにくいという現実に直面したとき、みなさんはどんなことを願いますか?私たち神戸アイライト協会が願うことは、「一人で苦しまないでほしい」ということです。そのためにこれまで26年間、利用者の皆様に寄り添えるアイライトであり続けようと、懸命に歩みを進めてきました。しかし、今、その進み方を見直さなければならない現状に直面しています。
これまで神戸アイライト協会では、視覚リハ、視覚障害福祉の充実を求めて神戸市や兵庫県に声を上げ続けてきました。特にこの数年間は、神戸市との話し合いを何度も続けてきました。今の現状のままでは、視覚リハや視覚専門相談体制の存続が危ぶまれるということを何度も何度も訴えてきました。
しかし、この私たちの声は、なかなか神戸市や兵庫県に届くことはありませんでした。どんなに私たち神戸アイライト協会が声をあげても、その声は届かない。これが、私たちが感じてきた現実です。このまま同じように委託事業を受け続けたら、本当にいつか、神戸・兵庫から視覚リハがなくなってしまう。それだけは、阻止したい。何としても視覚リハを守っていきたい。この思いで、次の対応として、事業の委託を受けないことで神戸市にバトンを戻し、新たな持続可能な体制を考えてもらうことを求めていくという決断をしました。
そして、この決断には、ひとつ欠かせないものがあります。それは、神戸アイライト協会がではなく、神戸・兵庫の視覚障害当事者や関係者ひとりひとりが自分自身の問題として受け止め、しっかりと声をあげ、視覚リハの存続を求めていくことであると思います。そのために、私たち神戸アイライト協会は、自分たちにできることとして、みんなで考え、みんなで思いを語り合うようなイベントを計画しました。
ひとつ目は、6月21日に開催した、神戸・兵庫の視覚障害福祉の未来を考える集いです。このイベントの目的は、神戸・兵庫の視覚障害福祉の現状、神戸アイライト協会の現状をしっかりと伝え理解してもらうことと、それぞれの考えや思いを共有することで、みんなで神戸・兵庫の視覚障害福祉を考え、作っていくという機運を高めることでした。当事者や関係者が集まり、それぞれの思いや不安な気持ち、今後への願いなどを語り、共有し、みんなで自分たちに何ができるのかということを考えました。その中で確認できたことは、「視覚リハや相談ができる体制は、私たち当事者にとってなくてはならないものであり、何としてでも守っていかないといけないものである」ということです。そのために、ひとりひとりが自分にできることをしっかりと考え、取り組んでいくことが大切であると考えました。そして、次のイベントであるロービジョンサポートフェアでさらにこの考え、思いを深め、しっかりと神戸市や兵庫県に届けていこうということを確認しました。
7月19日に開催予定のロービジョンサポートフェア2025夏では、6月の集いででた意見をもとに、様々な当事者団体の代表者の方にも加わっていただき、私たちの願う未来についてみんなで語り合っていきたいと思います。「nothing about us without us」
神戸・兵庫に住む私たちで、自分たちの未来を切り開いていくために、私たち当事者、私たち関係者から、しっかりと思いを届けていけるように、神戸アイライト協会も一緒に一丸となって取り組んでいきたいと思います。そして、その先には、「私たちが安心して自分らしく活躍できる未来」「困っている人たちにきちんと支援の手が届き、一人で悩まなくても良い未来」…そんな未来を作っていけたらいいなと思います。

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【 編集後記 】

2020年5月20付けで認定NPO法人として認められてから早くも5年です。初めての更新申請に臨みました。多くの皆様に賛助会費とご寄付で応援していただき、おかげさまで信頼の証としての「5年間で500件以上」の件数はクリアしました。ありがとうございました。合わせて実地調査を受けて更新を認めていただくことができました。当協会は大きな転換期を迎えておりますが、これからも信頼ある認定NPO法人として活動を進めて参ります。今後ともご支援ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

(和田)

本分終了