以下本文
神戸アイライト通信 NO.52号 発行:2025年1月
- ・震災から30年 防災・減災の未来のためにも訪問指導の充実した街に!歩行訓練等の視覚リハが未来の神戸でも安定して続くように
- ・1995年1月17日 阪神・淡路大震災の日
- ・活動紹介 兵庫県朗読ボランティア連絡会(朗V連)
- ・アイライトフェア2024
- ・定期メンテナンスのお話
- ・編集後記
震災から30年 防災・減災の未来のためにも訪問指導の充実した街に!歩行訓練等の視覚リハが未来の神戸でも安定して続くように
理事長 森 一成
2025年1月17日で阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)から30年になります。改めて犠牲になられた多くの皆様のご冥福をお祈りしたいと思います。また神戸で被災した者の一人として救援活動に従事していただいた皆様、物心両面でご支援いただいた皆様に感謝を表明したいと思います。
震災時に視覚障がい者支援に全国から歩行訓練士等の視覚障がい施設職員の有志がかけつけてくれました。安否確認をし、目薬等の必要物資を届けるなどの活動をしてくれました。緊急の歩行サポートが必要な人には歩行訓練を実施してくれました。しかしボランティア活動は1週間程度で終了します。歩行訓練士たちも戻っていきます。それを引き継ぐ団体も事業も当時の神戸にはありませんでした。
地域に訪問指導事業があれば、自分が訪問歩行訓練士だったらできたかもしれません。しかし当時の私は事実上、一般の避難所となった盲学校での勤務と被災して別に暮らすことになった家族のことで精一杯でした。(2面参照)大災害時には施設の職員は、利用者への対応など施設内での業務に追われます。状況の変化を視覚で理解することが難しい視覚障がい者は非常に多くの困難に直面します。地域に安定的な訪問指導事業があり、訪問歩行訓練士等が地域にいれば安否確認、緊急歩行訓練などに対応できる可能性があります。また基本的な歩行訓練を受けた人は自分で玄関へ行って助けを求めるなど災害時の歩行対応能力が改善されます。
その後の東日本大震災、熊本地震、能登半島地震で日本盲人福祉委員会が現地に医療福祉関係者を派遣しましたが、主力は訪問指導事業に従事する歩行訓練士でした。地域に歩行訓練士等の訪問指導事業があることは、大災害への防災・減災対策でもあるのです。
歩行訓練等の視覚リハが未来の神戸でも安定して続くように願っていますが、現在の神戸の状況は大変厳しいと言わざるをえません。充実どころか継続すら危機です。私たちは未来のために大きな分岐点に立っています。
1995年1月17日 阪神・淡路大震災の日
理事長 森 一成
阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)から30年の節目の年を迎え、個人的な体験談で恐縮ですが、1市民の体験として記させていただきます。 1995年1月17日午前5時46分、それは突然やってきました。その瞬間、体は浮き上がり、その後沈んだように思います。本能的に布団を頭にかぶり、その後の激しい横揺れに耐えました。何か爆発したのか戦争でも起こったのかという思いが一瞬頭をよぎりました。まだ夜明け前で真っ暗闇でした。10数秒後(もっと長く感じました)揺れがおさまり隣室の3人に「大丈夫か」と声をかけました。
当時、賃貸マンションの3階の2DKの部屋に妻と保育所に通う幼児二人の家族4人で暮らしていました。揺れがおさまって家族に声をかけると返事があり、無事なことを確認できほっとしました。しかし隣の部屋に行こうとしたら何かがあり進めません。倒れた洋服ダンスとわかるまで、しばらくかかりました。そしてわからない不気味な音がしており、ガスくさいにおいもしました。ガスが漏れているのではないかと思い台所に向かおうとしましたが、やはり進むことができません。真っ暗な中、昨夜大きな鍋で炊いてコンロにおいてあったカレーが部屋中に飛び散っていました。状況がわからないまま、散乱するものを乗り越えて、ようやくレンジ台にたどりつきました。やはりガス管は外れて、元栓からガスが漏れていました。元栓を閉めようとしましたが、変形していてなかなか閉まりません。しばらくして何とか閉めることができました。20分以上かかったのではないかと思います。停電していたのが幸いでした。その間に通電していたら爆発していたかもしれません。
次に不気味な音の方に向かいました。やはり暗闇で散乱する中、音の方に手を伸ばしますが届きません。散乱するものをかき分けて、ようやく手に取ると電気カミソリでした。落下の衝撃で勝手に作動したようです。よくぞガスに引火しなかったと思いながら止めることができました。
そのころにようやく夜明けが近づき少し明るくなりました。大きな重いテレビは私のすぐそばに落ちていました。4歳の次男が寝ている場所には大きな本棚が倒れていました。寝相が悪くて助かりました。外で人の声も聞こえてきました。ここで初めて窓を開けて外の景色を見ました。いくつかの煙が見えました。ここで初めて大きな地震があったことを確信しました。
近くの古い木造家屋に住む高齢の母が心配になりました。玄関のドアも変形していましたが、何とか開きました。ドアは施錠しないことにして母の家に向かいました。途中の道には着の身着のままで多くの人が道に立っていました。古い木造家屋が倒壊して道をふさいでいるのをよけて歩きました。途中の小さな鉄橋で阪急電車が無人で停車していました。私は家の倒壊も覚悟しながら実家に行きました。実家は壁は落ちて玄関ドアは変形していましたが立っていました。顔見知りの近所の男性が「お母さんは無事や。」と教えてくれました。近くの駐車場で母と出会ったかと思います、ガラスか何かで足を切ったようでしたが無事でほっとしました。実家の玄関は施錠できない状態でしたが、とにかく母をマンションに連れて帰りました。 マンションを下から見あげると壁にひびが入っていました。転居を検討した別のマンションは崩れていました。
その日の夕方、マンションの大家さんが来て余震でここが倒壊するかもしれないので退去してほしいと告げられました。近くの小学校に5人で向かいましたが満員で入れませんでした。暗い道を歩き中学校でお願いすると美術準備室に場所をとってくれて教材の並ぶ棚の通路に家族分かれて横になることができました。
数日後に子供を郊外の妻の実家に、母を大阪の親戚宅に避難させて、ようやく出勤できました。勤務先の盲学校は避難した市民の方で教室も廊下もあふれていました。勤務は休日勤務も夜間宿直もある状況でした。傾いたビルの間を歩く、片道約2時間の徒歩通勤でした。
活動紹介 兵庫県朗読ボランティア連絡会(朗V連)
中山記念会館の3階では兵庫県朗読ボランティア連絡会(朗V連)さんによる「小さな朗読会」や「代読」がおこなわれています。録音の朗読とは、ひと味ちがった生の声の朗読会です。その場で直接、語りかけてくる朗読が、耳に心にしみます!毎回、心あたたまる作品、心が明るくなる作品が登場!お聴きになりたい方はお問い合わせの上、ぜひぜひご来館ください♪
小さな朗読会
開催:月1回
今後の予定:2025年1月17日(金)
12時20分から12時50分
お問い合わせ:070-8350-0695
兵庫県朗読ボランティア連絡会(朗V連)
代読
本に限らず、取扱説明書や書類など代わりに読んでほしいなというものがありましたら、ご予約の上、ご来館ください。
開催:毎月4回(1回につき2時間程度)
第1木曜、第3木曜、第4火曜は午後1時から3時
第2水曜は午前10時から12時
※警報が発令された日は中止(朝7時の時点で)
☆ ご予約をお願いします。お電話で前日の午後5時まで ☆
電話:070-8350-0695
兵庫県朗読ボランティア連絡会(朗V連)
今後の予定
2025年
1月28日(木)午後1時~
2月6日(木)午後1時~、2月12日(水)午前10時~
2月20日(木)午後1時~、2月25日(木)午後1時~
3月6日(木)午後1時~、3月12日(水)午前10時~
3月25日(木)午後1時~
アイライトフェア2024
副理事長・IT事業部長 飯山知子
10月26日(土曜)、中山記念会館1階大会議室において、「アイライトフェア2024」を開催いたしました。今回のアイライトフェアは25周年記念ということで、様々な演奏を交えた華やかで盛沢山なイベントとなりました。会場には関係者・スタッフを含め106名と多くの方々にご参加いただきました。
イベントは地域活動支援センター「アイライト新神戸」のメンバーとスタッフ・ボランティアで構成される「アイライトアンサンブル」によるリコーダー演奏から開始されました。様々なリコーダーによるアンサンブルは堂に入ったもので心地良い音色に心が癒されました。
続いて、25周年記念ということでスタッフの藤原作成のパワーポイントを正面の大きなスクリーンに映し、スライドから流れる紹介の音声を聴きながら神戸アイライト協会の25年の歩みを振り返りました。音声ソフトを巧みに操る藤原ならではのパワーポイントで、聴きやすい速度、読み上げは合成音声という凝ったものでした。もちろん、その内容も分かりやすく纏められており、神戸アイライト協会の歴史を知らない人にも歩みを共に感じていただける内容でした。
続いて、こちらも25周年記念ということでロイヤル嫁姑による楽しいミニコンサートがありました。観衆を飽きさせないパフォーマンスは流石の一言に尽きます。観衆を巻き込み、自然に笑顔になっている、幸せな顔にすることを狙って考えられたレパートリーに時間も場所も忘れて笑っていました。ロイヤル嫁姑が凄いのは笑いだけでない所だとおもいます。笑った後には、感傷に浸って、また笑ってと、人生を詰め込んでギュっと濃縮したようなコンサートでした。
コンサートの後は休憩を挟み「自分に合った職や働き方を考える ~視覚障がい者の転職は難しいのか?~」と題して、シンポジウムを行いました。シンポジストには当事者の赤堀浩敬氏と都築浩史氏、助言者には日本ライトハウスの津田諭氏に登壇いただきました。数回の転職を経験された都築氏からは視覚障がい者の働き方、職の探し方など体験談を元に分かりやすくご紹介いただき、視覚障がいに特化した職業訓練や相談できる場所については赤堀氏から、また取り巻く環境やサービスなどについては津田氏に助言をいただきながら、視覚障がい者の働く環境を知らない方でも想像しやすい内容となりました。客席からもご自身の経験から思い至った心境をお話いただき、何事も続けていくことで現状を突破する突破口が開けてくる、逆に続けなければ何も変えられないと会場にいる多くの方が得心したのではないかと感じました。視覚障がい者が働く環境、ひいては視覚障がい者を取り巻く環境をより良いものにする為には、すぐに変えられなくても様々な働きかけを続けていくことが大切であると、気持ちを新たにしてイベントは終了しました。
定期メンテナンスのお話
歩行訓練士 住吉 葉月
長過ぎる夏がようやく終わったと思ったのも束の間、すぐにコートが欲しくなるような温度の変化に戸惑いながら街中をてくてく歩いています。今回は「道具ってやっぱり大事!」と思ったお話です。白杖の相談に来たAさん、「この白杖長年使っているんだけど、このまま使っていてよいのか見てもらえませんか」とのこと。見せてもらうと、よく使い込まれてはいるものの、特に損傷もない様子です。詳しく話を聞いてみると…
「この白杖を選んだ時より、大分見えにくくなっててね。最初は持ってるだけだったけど、今は振って路面を確認する。すると杖先がとにかくひっかかる。たまに、グリップがおなかにぐっと刺さることがあってね、その時の衝撃で、自分がどこにいるか忘れるくらいなの」それは大変、道に迷っちゃうかも?
杖先は細長いスタンダードなタイプ、確かに人によっては路面にひっかかりやすい。そこでキノコみたいな形の、くねくねしなる杖先がついた白杖を試してもらうと…
「これ!めっちゃいい!路面の変化がよくわかるし、おなかに刺さらない!これにします」と即決です。
後日、白杖が届いたと連絡がありました。感想を聞くと…
「もう、うれし過ぎてね。夜、用事もないのに駅まで行っちゃった!白線も分かるし(注・個人差あり)、ひっかからない。これでもう迷子にならずに済みます」と喜んでいる様子が伝わってきました。Aさんにぴったりの杖先に出会えたようです。
杖先の部分を「石突き」または「チップ」と言いますが、形状がいくつかあります。マシュマロのような形だったり、くるくる回転するタイプだったり。その人の操作スタイルによって合うものは違ってくるので、もし歩く時しっくりこない場合、この石突きを替えてみると歩きやすくなるかもしれません。また、よく外出したり、単独で歩くことが多い人は、石突きがだんだん削れてきて、路面にひっかかりやすくなります。その場合も、新しいものに交換することをお勧めします。白杖をお使いの方は石突きを含め、白杖の点検をたまにしてあげると、歩行のパフォーマンスが上がるかも?ご相談、お待ちしております。
編集後記
阪神・淡路大震災から30年になります。それぞれの「あの日」。語り継ぐたいせつさとともに、思い返すのは辛く悲しいというお気持ちもあると思います。震災で、ひとを思いやる、助け合う気持ちも育まれたと記憶しています。今の世の中は不安を感じる出来事が多く、相手を、まわりを思いやり、助け合う気持ちの連鎖で、少しでも安心できる世の中になってくれればと願っています。
(和田)
本分終了