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神戸アイライト通信 NO.48 発行:23年1月


世界も大変ですが、神戸の視覚リハの危機が続いています!

理事長  森 一成

いつも神戸アイライト協会に温かいご支援、ご協力をいただきありがとうございます。昨年2021年秋に移転し、1年が立ちました。地元、新開地の街にもなじんできました。
しかし神戸市委託の新たな視覚リハビリテーション事業(IT支援等の「神戸市視覚障害者生活支援事業」および歩行訓練、ロービジョン対応等の「神戸市視覚障害者生活訓練事業」)を実施していますが、予算不足で大幅赤字(約800万円)で事業運営をする状況です。適正な予算への改善を要望してきましたが、来年度も同額の予算での公募が始まりました。
現在は複数の歩行訓練士、視能訓練士、IT指導員、ピア相談員(看護師)など6名以上の視覚リハ担当者で「相談専用電話を視覚リハ担当者がとる」「予約した来訪者に対応する」「歩行訓練、IT相談の予約を随時入れる」などに平均的年収のサラリーマン2人雇用する予算で、経費を切り詰めて他の予算を切り崩して実施しています。しかしこのままでは数年後に事業は実施できなくなり、協会自身も存続の危機となります。この状況はアイライトのみならず神戸の視覚リハの危機と認識しています。
2022年7月のロービジョンサポートフェアでも他市の視覚リハ事業の紹介をしていただき適正な予算での実施をよびかけました。
大変厳しい状況ですが、多くの皆様と協力して事業の改善、神戸の視覚リハ充実に取り組んでいきます。

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ご挨拶

副理事長 山縣祥隆(山縣眼科医院

神戸アイライト協会は2021年の秋、神戸市兵庫区の新中山記念会館に拠点を移し、これからますます発展して行こうとしている矢先、2022年3月末で神戸市委託事業として継続してきたトータルサポート事業が終了することとなり、大幅な活動資金削減の中で活動せざるをえなくなりました。
私がまだロービジョンケアを始めたばかりの2000年、神戸市灘区のマンションの一室で、森さん、新阜さん、故木村文子さんと4名で会議を行った日のことは今でもはっきりと覚えています。それから22年、これだけ神戸アイライト協会が発展してきたのは、理事長の森さん以下、スタッフ、ボランティアの方々の地道なご努力の賜ですが、何事にも、熱意や努力だけでは打開できない問題は起こりえます。
神戸アイライト協会の活動は、そもそも訪問型視覚障害リハビリテーションの充実、および視覚障害当事者のみならず眼科医療関係者に向けた相談事業が両輪となっていますが、現在ではそれに加えて当事者の生活の質向上や社会的啓発を目的とした各種イベント開催、ITハンドファームや地域活動支援センター「アイライト新神戸」における通所事業、その他、多くの事業を行っています。
現在、協会始まって以来の危機的現状ですが、協会設立の理念はしっかりと胸に刻んだ上で、委託事業の適正予算化とともに資金調達の方法は探して活動を維持していくしかありません。モチベーションを失わないようにしたいものです。

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通所施設利用メンバー募集

視覚障害者を対象とした通所施設を開設しています。
火曜から土曜、月10日程度通所可能な方、関心のある方は、お気軽にお問い合わせください。
電話 078-531-6340 事務局 和田

◆視覚障害者活動センター「アイライト新神戸」
カラダを動かしたり、リコーダー演奏、手芸やビーズ、英会話やパソコンなど、みんなで楽しく過ごしています♪外出行事(ウォーキング)や地域の方との交流もあります。

◆ITハンドファーム [自立訓練(機能訓練)・就労継続支援B型]
音声パソコンの訓練、手作業やパソコン作業をおこなっています! 
手作業では、このようなお仕事をしています。
◎発送作業(チラシ分けや三つ折り、ラベル貼り、封筒作成、住所印押し等)
点字名刺作成(点字印刷機で名刺1枚ずつプレス)
ビーズ製品作成(ストラップ、メガネ・マスク・帽子チェーン等)
◎点字用紙再利用製品作成(一筆箋、ポチ袋、封筒等)
◎部材小分け作業(決まった個数に袋分け、ラベル貼り等)
◎カフェコーナー接客対応

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アイライトフェア2022

副理事長・IT事業部長 飯山知子

10月22日(土曜)、中山記念会館1階大会議室において、「アイライトフェア2022」を開催いたしました。今回もコロナ対策として、会場は人数を制限しWebとの併用での開催とさせていただきました。会場には関係者・スタッフを含め約60名、Web開催のZoomでは約70名の方で北は北海道から南は沖縄まで日本全国からご参加いただきました。今回のアイライトフェアでは、視覚障がいを持つ学生にスポットをあて、現在の環境を知ることで今までと同様に必要な支援、またこれから必要となる支援の環境構築の必要性、そして共に当事者参画によって社会をノーマライズする時代を共に考えていきたいと感じるイベントとなりました。
基調講演では慶應義塾大学中野泰志教授から障がい学生を取り巻く環境を現在の環境が出来るまでの歴史や諸外国との比較、学問としての発展に至るまでの多角的な解説をいただき、就学・就労の現状と課題とそれを打破する為の提言まで短い時間の中、丁寧にレクチャーいただきました。
シンポジウムでは先の基調講演を受けて「就学、就労支援と視覚リハ」をテーマに4人のシンポジストにそれぞれの立場から所属する団体の説明やご自身の又は対応した経験などのお話をいただき、中野教授からは多くの方が気になる点についてそれぞれのシンポジストに直接質問されるなど盛り上がるシンポジウムとなりました。
視覚障がい学生を繋ぐ団体である「関西Student Library」の会長をされている松村直哉さんからは「関西Student Library」について、同じ視覚障がい学生と出会う機会に乏しい中で果たす役割・自身で感じた意味についてお話いただきました。
相談支援専門員として働きながら大学院で勉強もされている藤原奈津子さんからは大学によって対応が異なることなど実体験や相談支援専門員としてのお仕事について、また質問を受けて資格取得時の配慮申請などについてお話いただきました。
視覚障がいのある子ども達とその家族を支援する団体である「神戸アイフレンド」の代表をされている濵田節子さんからは「神戸アイフレンド」の今までとこれからについて、また障がい児の置かれている状況をデータの数字を交えてご報告いただきました。
神戸アイライト協会の専門相談員である中野規公美(看護師)からは、松村直哉さんへの支援内容について学校側・ご本人・ご家族それぞれの支援について、また藤原奈津子さんへの支援内容について、それぞれ当時のご本人の状況を加えながら報告がありました。
シンポジウムの中やイベント終了後も盲学校のこれからを考える質問などが寄せられ参加者の熱い思いが感じ取れるイベントとなりました。視覚障がい学生やご家族、先生方関係者を支援することでこれからの視覚障がい者の環境を変えること、それは当事者関係者のみならず社会にとっても大きなプラス効果をもたらすことは自明の理であります。神戸アイライト協会は現在非常に厳しい局面を迎えておりますが、視覚障がい者の支援団体としてこれからも地道な活動をコツコツと続けていく所存です。

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夜の歩行訓練のお話

歩行訓練士 住吉 葉月

秋も深まり、日が暮れるのが早くなってきました。今回は暗くなってからの歩行訓練のお話です。
白杖で歩くのに、昼と夜で違いがあるの?そう思う方もいるかもしれませんが、視覚に障害のある人の中には、昼間は見えていて移動に支障がないけれど、夜は見えにくくて外出できない、家に帰るのが不安と感じる人がいます。
このような見え方のAさんも昼間は見えているので、白杖は使っていないとのことですが…実はAさん、病院受診の時に行きは問題なく行けるのですが、帰りが遅くなった時には病院から駅までの移動が不安で、ここだけでも白杖を使って一人で歩けたら…と思いがありました。近所の目も気になるご様子で、
「私、いつもスタスタ歩いているのに、急に白杖を持ったら不思議に思われるのでは?」ということで……
「なるほど。それなら、知ってる人がいない場所で、暗い時間に白杖の練習をしてみませんか?」と提案します。「それだったら、やってみようかな」
日が暮れるのを待って、お店の照明も街灯もない場所を、白杖を持って歩いてみる体験です。駅の近くで照明が明るい所では「まだ平気です」と、トコトコ進んでいきますが、住宅街へ入り、次第に街灯も少なくなると…「どこ歩いているか全く分かりません」と、おそるおそる白杖を振って、ゆっくり歩くようになりました。
「塀や点字ブロックなど、白杖で伝うものがあったら伝ってみましょう」と、時折アドバイスをしながら目的地へ到着です。感想は…?
「暗くて見えない場所では、白杖あるとやっぱり安心感がありました。思ってたよりも、これなら白杖出してもいいかな、と思いました」
よかった、いざという時に使ってもらえそうです。
夜の歩行は、街灯を頼りに歩く、白線を懐中電灯で照らして歩く、白杖をしっかり振って歩く、人によってさまざまです。白杖で歩道と車道の段差をとらえれば落ちることもないし、白杖を振ることで電柱にぶつかる、植え込みに突っ込むこともなくなります。白杖は車のライトなどに反射しますので、運転手や歩行者に自分の存在を知らせることができ、安全につながります。
冬の帰り道、安心して歩きたいけど…そんな思いのある方、一度お話お聞かせください。もちろん、昼間の歩行訓練をご希望の方もお待ちしています。

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編集後記

11月末に「緊急支援ご寄付のお願い」をメール配信させていただきました。賛助会員になってくださった方、ご寄付くださった方、メッセージを添えてくださった方、メール転送にご協力くださった方、大変有難く胸が熱くなりました。心より感謝申し上げます。当協会は2023年4月に24年目を迎えます。必要としてくださる方々のためにも活動を継続し、後に繋いでいかなければなりません。行政に理解を求め、交渉を続けて参ります。多くの皆様方のご支援を、どうかよろしくお願い申し上げます。

(和田)

本分終了