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神戸アイライト通信 NO.47 発行:22年8月


世界も大変ですが、アイライトも大変です!

理事長  森 一成

いつも神戸アイライト協会に温かいご支援、ご協力をいただきありがとうございます。昨年2021年秋に神戸市兵庫区へ移転し、新しい中山記念会館や街になじんできております。新会館では旧会館ロービジョンルームの3倍の広さとなったロービジョンフロアで、複数のご相談にも同時に対応できるようになりました。
しかし神戸市委託事業として2008年から実施してきたトータルサポート事業(視覚専門相談と歩行訓練等の視覚リハ事業)が継続を要望しておりましたが叶わず、2021年度末で終了となりました。そして2022年度から神戸市が新たに始めたIT支援等の「神戸市視覚障害者生活支援事業」および歩行訓練、ロービジョン対応等の「神戸市視覚障害者生活訓練事業」という公募事業で委託契約をしましたが、両方あわせても予算が今までの3分の2程度となりました。
これまでも厳しい運営でしたが、今年度は約800万の大幅な赤字で事業運営をする状況です。地域にとって、市民にとって大切な事業なので、継続しています。しかし、このままだと近い将来に事業は実施できなくなり、協会自身も存続の危機となります。事業改善を求めていますが、見通しは立っておりません。
2022年3月のロービジョンサポートフェアでも事業の改善がなければ電話対応など困難になる危惧を伝えました。地域の皆様、関係者の皆様と協力しながら事業の維持、継続、充実のための方策を考えたいと思います。

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<2021年度 まとめ> 

事務局長 和田眞由美

1.神戸市兵庫区に新しく完成した中山記念会館へ移転しました!
 10月に神戸市中央区から兵庫区へ法人全体の引越しをしました。旧会館で過ごした14年半の間におかげさまで事業が拡大し、たくさん荷造りをして無事に移転が完了しました。通所施設利用者の皆様には移転の数ヶ月前から、環境の確認のため散策に出かけたり、必要な方にはルートの歩行訓練を実施しました。コロナ感染拡大の懸念が続く中での移転作業で、早速、アクリル板や手指消毒液の設置をして、再開の日を迎えました。地下1階・地上5階建ての2階部分を全て当協会で使わせていただいています。2階フロアの中心は広くなったロービジョンフロアです。面談でのご相談は、あらかじめお電話でのご予約をお願いしています。

2.神戸市委託のトータルサポート事業が終了しました!
 2008年に神戸市の委託事業として始まった、相談を初めとするトータルサポート事業が終わりを迎えてしまいました。広いスペースに移転して、これから!という時に。14年の間に年々増え続けた相談件数は約28000件に上りました。2月後半に2つの新事業が公募され、3月31日に受託の通知を受けました。委託金は大幅に減額となり、2022年度は大きな赤字でスタートすることになりました。適性な予算化を求めて神戸市と交渉して参ります。ご支援をお願いいたします。

3.楽器をご寄贈いただきました!
 神戸市社会福祉協議会様を通して株式会社デンソーテン様より、バスリコーダーやドラム、ミュージックベルの楽器一式をご寄贈いただきました。通所施設の音楽活動で大切に使わせていただきます。

4.感染症拡大防止のための補助金をいただきました!
公益財団法人JKA様より、2021年度の競輪公益資金による補助を受けて、新型コロナウイルス感染症拡大防止のための物品購入をおこなうことができました。本事業の実施により、検温の徹底と室内の空気清浄をおこない、ご利用者様と職員関係者の安心安全の確保に繋がりました。今後も感染症対策のために活用させていただきます。 補助金額 625,000円
事業名    2021年度 緊急的な対応を必要とする事業
    (新型コロナウイルス感染症の拡大防止策)補助事業
事業内容   感染対策機器の整備 
サーマルカメラ 2台  空気清浄機 2台

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歩かない訓練のお話  

歩行訓練士 住吉 葉月

6月のうちに梅雨明けが宣言され、暑い時期が長く続きそうです。酷暑の中の歩行訓練はちょっとだけお休み、今回は歩かない訓練のお話です。
その日は風がとても強く、外歩きには向かない状況だったので、歩くのはやめて、いつもの生活の中での工夫について聞いてみました。
子育て真っ最中のAさん、家事も以前は気が進まないままやっていたけれど、今は「どうしたら楽にできる?」と考えながら、楽しく取り組んでいるそうです。例えば、ご飯の支度。揚げ物の下ごしらえは、粉もお肉も全部ビニール袋に入れてします。そうすれば手も汚れないし、後始末も楽ちんとのこと。
チキンライスは具材だけ炒め、炊きあがった炊飯器のご飯に混ぜて味付け!あとは夕方に卵を焼けば完成です。
これは使える!と頭の中にメモしながら、「それにしても、工夫してみようと思ったきっかけは?」と尋ねてみると…
「コロナが始まってから、学校も休校になって家族みんなが家で過ごす時間が多くなって。そうなると、ご飯作ったり子どもの世話をしたり、どうしても工夫せざるを得なくなったんです」
「それと、子どもが『ママ、ちょっと来て!』って言った時に『あとでねー!』と後回しにしていたら、どうせ見てくれないんだと『ちょっと来て!』を言ってくれなくなって。子どもが来てほしい時にすぐに行ってあげるには、どうしたらいいか、という感じで発想が変わったんです」
なるほど、母は強し!ですね。…他に、お困りのことありますか?
「困ってること…コーヒーを飲むのに丁度いいお湯の量が入れられなくて。多すぎて味が薄くなっちゃうのも悲しいし」Aさんのつぶやきには、こんな提案です。
「それなら、初めにマグカップで水を量って、その分だけ沸かしてみては?注ぎ切れば、適量になると思うけど」「なるほど、それやってみます!」
お互いネタを披露しながら、楽しく訓練しています。歩行含めて、生活の中での困りごとを一緒に考えてみませんか?ご相談お待ちしています。

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視覚専門相談、視覚リハについて

                        理事長  森 一成

さて視覚専門相談、視覚リハとは何でしょうか。まず視覚リハですが、視覚リハビリテーションまたは視覚障害リハビリテーションの略称。視覚障害になって歩行や読み書き、生活に必要な一連の動作などが困難になる。それを改善する方法。見えにくくなったことを用具で補ったり、音や手の動作などで視覚にかえて聴覚や触覚を使ったりして生活上の困難を改善する取り組みです。一人で白杖を使って歩くなどの歩行訓練、目を使わない生活動作の訓練、音声で確認してのパソコン操作などさまざまな取り組みがあります。
視覚障害は歩行、生活動作など本人だけでは難しく、周囲の介助がないと困難だという考えが長らく多数でした。今でも多くの人が、そう思っている状況も残念ながらあります。しかしアメリカでは1940年代に視覚障害になった軍人の社会復帰プログラムとして歩行訓練や生活動作の訓練などの視覚リハが考案されました。そして歩行を指導する専門家「歩行訓練士」も誕生しました。大学卒業後に2年間学習して習得します。それに見合った待遇の職場も用意されているとのことです。またアメリカには歩行以外の視覚リハ専門職もあるようで、日本人の視覚障害者で取得した人もいます。
この歩行訓練、視覚リハは1965年頃に日本にも伝わり、1970年から日本でも歩行訓練士の養成が始まりました。そして国立視力障害センターや日本ライトハウスなどの社会福祉法人で入所者に、盲学校では生徒に歩行訓練等の視覚リハが実施されていきました。その後は在宅福祉が主流になり、歩行訓練は訪問指導事業が中心になっていきます。こういった訪問指導等の視覚リハ事業を担う歩行訓練士等が視覚専門相談の担い手です。視覚専門相談は視覚リハに精通した専門家が対応する相談で、視覚リハの一部といえます。視覚リハの情報提供やそれに基づく対応を一般の障害者相談窓口で受けるのは困難です。これは基本的に現在も変わっていません。
こうした状況の中、多くの都市では早くから市の独自事業として、視覚リハ事業が実施されてきました。名称など微妙な違いはありますが、歩行訓練士等の視覚リハ専門家の人件費を確保して事業を実施しています。高知市は市の職員を歩行訓練士にして実施、また外郭団体に委託して市の福祉センター、リハビリセンターを活動拠点に提供している市も多くあります。京都ライトハウスも元は京都市の病院を提供されました。
そういったなか中山視覚福祉財団の協力で、中山記念会館を神戸アイライト協会は拠点としました。新会館に2021年10月に移転し設備は充実しました。しかし視覚リハ、視覚専門相談を担う専門家が確保されないと事業は機能しません。2022年度からの事業変更、予算削減で事業の継続、充実が不透明になっていますが、神戸でも視覚リハ、視覚専門相談が継続、充実するように取り組み続けます。

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編集後記

6月25日、ようやく神戸ライトサロンを開催することができました。時間を短くし、定員も減らして、人との距離をとって感染リスクを減らしての開催でした。お帰りになるとき口々に「とっても楽しかった!」との弾んだ声が聞こえてきました。初めましての方同士ですが見えない見えにくいことでの思いは一緒、すぐにお互い打ち解けることができました。コロナ禍でオンライン開催の便利さを知りましたが、リアル開催の良さを再確認しました。

(和田)

本分終了