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神戸アイライト通信 NO.46 発行:22年1月
新会館への移転と神戸アイライト協会の今後
理事長 森 一成
2021年10月14日に2007年から長年活動してきた神戸市中央区神若通の中山記念会館を離れ、神戸市兵庫区水木通の新会館に移転しました。広い敷地で旧会館で4階に分かれていた各施設が、すべて2階に集合しています。特にロービジョン・グッズを並べた「ロービジョンルーム」は、3倍の大きさに拡張しオープンスペースになりました。名前も「ロービジョンフロア」と改めテーブルを5つ備えて複数の方の相談対応が可能になりました。(移転の詳細はこちら)
複数の相談対応には対応できる複数の専門スタッフが必要です。電話を聴く人、面談対応する人、訪問での対応をする人。また歩行、パソコン、ロービジョン用具、就労・就学・障害年金・地域の社会資源など専門的知識を要する内容に対応する必要があります。当協会は歩行訓練士、視能訓練士、IT指導者、看護師・介護福祉士・介護支援専門員・相談支援従事者などを擁して神戸市委託で視覚障害ロービジョン専門相談事業を展開してきました。職員の半数にあたる約10名が対応しています。
しかしながら神戸市が来年度は事業を再構築するとのことで予算のめどが全くたっておりません。私たちは地域に必要不可欠なこの事業を今後も神戸市や医療福祉関係者の皆さん、そしてロービジョン、視覚障害の皆さんと協力して継続していきたいと思っています。
ご挨拶
副理事長 山縣祥隆(山縣眼科医院)
神戸アイライト協会会員の皆さん、
昨年年末は新型コロナウイルス感染症、第3波の気配をご挨拶の冒頭に書きました。今回は、全国民の我慢と努力でかなり感染症数減少が見られ、明るい文章の書き出しを考えていましたが、新たなオミクロン株の出現がまた世界中を騒がせています。その後、お変わりなくお過ごしでしょうか。
さて、移転しました新しい中山記念会館でのアイライトフェアが無事、終了しました。ご参加頂いたすべての皆様に改めてお礼を申し上げます。
アイライトフェアのシンポジウムのテーマは「視覚障害ロービジョン専門相談の窓口」、当事者の方2名がお話されたことは、やはり視覚に障害を持ち、ロービジョンケアを必要となった方が、いかにスムースに医療からケアに繋がるか、という、私がロービジョンケアを始めた約20年前からある古くて新しい問題でした。
これを少しでも解決できるよう、私は兵庫県下でロービジョンケアを行っている医療機関をまとめた兵庫県ロービジョンマップ、そしてシンポジウムでも取り上げられた、眼科医から当事者の方に手渡すスマートサイトを考案し、協会と共に運用してきました。そしてこの両者とも日本眼科医会の協力で全国47都道府県に拡がりましたが、20年経ってもまだまだ目的は達成されていないようです。
では今後、どのような手を打てば良いのでしょうか。間違いなく言えることは、視覚に障害を持つ方にロービジョンケアの情報を伝える手段はいくつあっても良いということ、そして地域のネットワークを充実させること、この2つです。兵庫県、特に神戸市には、他の地域にない最大のメリットと言える神戸アイセンター病院、そしてビジョンパークがあります。このメリットを生かし、今後も出来る限りの努力をしていく所存です。引き続き、ご協力を宜しくお願いいたします。
神戸市兵庫区へ移転しました(中山記念会館)
慣れ親しんだ神戸市中央区を離れ、兵庫区に新しく完成した中山記念会館に移転しました。ロービジョンの眼科患者の皆様、視覚障がいの皆様への支援活動にさらに尽力して参ります。5階だての2階フロアの全てを神戸アイライト協会で使わせていただいています。1階正面玄関ではインターホンで「201」を押してください。
2階フロアはドーナツ型になっていて、周りに事務所や通所施設、多目的室などがあり、中心にロービジョンフロアがあります。カウンターで囲まれた、オープンスペースです。そこでご相談をお聞きし、白杖やルーペ、拡大読書機など用具や機器類に実際に触れて試していただけます。ゆっくりとお時間をお取りしますので、事前に必ずお電話でご予約をお願いします。
<新電話番号>火曜~土曜10時から16時
(代表) 078-531-6340 (相談専用) 078-531-6371
(FAX) 078-531-6370
ご周知いただきました相談専用番号(078-221-6019)だけは自動転送で新しい相談専用番号へつながります。順次、ご変更お願いいたします。
アイライトフェア2021
副理事長・IT事業部長 飯山知子
11月27日(土曜)、中山記念会館1階大会議室において、「アイライトフェア2021」を開催いたしました。前回に引き続き落ち着いてきたとはいえコロナ禍ということで、会場は関係者のみでWeb開催とさせていただきました。中山記念会館新会館へ移転後、外部向けイベントとしては初めての開催となりました。会場には関係者・スタッフを含め約45名、Web開催のZoomでは約60名の方に日本全国からご参加いただきました。今回のアイライトフェアでは、兵庫県・神戸市での神戸アイライト協会の担う役割、中山記念会館の新たな拠点での期待される役割、そして何より視覚障害者の相談窓口の重要性をご理解いただき、今後の視覚障害者の専門相談の在り方を共に考える良い機会となりました。
中山視覚福祉財団の常務理事 松前篤志様より来賓挨拶で、神戸アイライト協会は、ワンフロアで効率良く相談出来るようになり現在の約4千件の相談件数が倍になるのではないか、そして活動が益々活発になることを期待しているというお言葉をいただきました。
神戸アイセンター病院 高橋政代先生からZoomにて、神戸アイライト協会の活動が神戸アイセンター病院を創設しようというきっかけになったこと、眼科からの紹介窓口として神戸アイライト協会へ繋ぐリーフレット「つばさ」や「ビジョンパーク」についてのお話をいただきました。
シンポジウムでは、「視覚障害ロービジョン専門相談の窓口」をテーマに4人のシンポジストにそれぞれの立場からの意見をいただきました。
シンポジウム冒頭にコーディネーターの森から視覚障害ロービジョン専門相談事業である「トータルサポート事業」のいきさつと手帳取得前に相談すること継続していくことの重要性についての話がありました。
当事者で相談利用者として増田和也さんから、視覚障害者の相談はその相談内容が身近な生活から心理、制度、就労など多岐にわたり専門性が高いこと、また個人の見え方、障害に至った環境も多岐にわたることなどの話がありました。また、自身の相談の経緯を交えて相談の重要性についての話がありました。
当事者で相談利用者であり現在は大学院生で障害全般の相談員でもある藤原奈津子さんから、視覚障害になった当時を振り返り、現在のような充実した生活が送れるようになるとは考えられなかったこと、相談利用した当時の状況と支援から気が付いた専門の支援機関に繋がる重要性についての話がありました。そして、一人で悩まなくてよくなったこと、寄り添って考えてもらえることの安心感を持つことで、現在の自分らしい生活を取り戻すことが出来たという話がありました。
神戸アイライト協会の専門相談員である中野規公美から、当協会の相談の特徴について「対象者が手帳の有無にかかわらず」「神戸市の委託事業であり特別な手続きが必要ないこと」「地域に根差した相談機関であること」「専門職による相談事業であること」の話や専門相談の対応についての話がありました。
理化学研究所 生命機能科学研究センター 網膜再生医療研究開発プロジェクト 上級研究員、神戸市立神戸アイセンター病院 眼科医、公益社団法人NEXT VISION 常務理事と多くの肩書を持つ仲泊聡先生からは眼科医の立場から自身の眼科医としては珍しいロービジョンケアの関わりと一般の眼科医のロービジョンケアの関心とその背景とその経緯についての話がありました。また、兵庫県から始まり10年かかり日本全国に広まったスマートサイトについて、眼科から福祉へ繋がる仕組みと新たな問題について話がありました。
コロナ禍ということで短い時間でのシンポジウムとなりましたが、視覚障害の専門相談の必要性、長期的な相談や訓練の必要性、現在の状況と未来の展望を見据えたシンポジウムとなりました。
現在の視覚障害専門相談窓口としての役割を果たす為には、様々な立場の方からご意見・ご理解が必須となります。皆様のご支援と共にこれからも地域に根差して活動に邁進していく神戸アイライト協会でありたいと強く感じました。
コロナと歩行訓練 その後
歩行訓練士 住吉 葉月
今年もあとわずかとなりました。思えば2年近くにわたり、私達はコロナと向き合ってきたことになります。以前も、外に出ない状態が続くと筋力、体力が落ちてしまうのが心配と書きましたが、落ちるのはそれだけではなかったようです。
数年前に歩行訓練でお会いしたAさんから、引っ越したので最寄りバス停までのルートを確認したい、一人でゴミステーションまでゴミ出しに行きたいと依頼がありました。長年スポーツに取り組み、はつらつとしたイメージのAさん、お元気かなと久々に会ってみると…あら、ちょっと表情が硬いかも…?手引きでバス停やゴミステーションまでのルートを移動するのですが、私の腕を持つ手にぎゅっと力が入っているのが印象的でした。
これなら一人でも行けそうですね、というところまで練習して、終わりにお話をうかがうと…「コロナで外出する回数が減ったでしょう。スポーツの練習も、大会も自粛ばかりで。ひたすら引きこもっていたら、外に出るのが怖くなってしまったの。一人で歩く自信がなくなってしまった」とのこと。あんなにポジティブなAさんが!?と驚きましたが「よく言われるんですが、意外と気が小っちゃいんですよ」と苦笑していました。
数日後、Aさんから電話があり「あの後、朝早くにゴミ出しに一人で行ってみたの。とっても、気持ちがよかった。やっぱり外に出なくてはダメだと思った。今度は自宅周辺で散歩コースを作ってみたいので、また歩行訓練お願いしますね」と、うれしい報告をいただきました。
歩行訓練を再開してから、同じように外に出られなくなったという話を多く聞きました。中には、隣の家に行ったけど、帰り道が分からなくなってしまい、それから一人で外出できないという方もいました。外に出なくなる→歩けなくなる→自信を失ってしまう→ますます外に出られなくなる、の悪循環のようです。しかし「外に出たら、歩けたらきっと気分がいいだろうし、自信も持てる」という思いも、皆さんお持ちなのも確かです。
コロナで多くのことを制限されてきましたが、これからは少しずつ、取り戻していきたいものです。もちろん対策は継続しつつ。もう一度、あるいは初めて、外歩きを楽しみたい!という方、ぜひご相談ください。良い方法を一緒に考えましょう。
編集後記
眼科の先生、それから役所の窓口で「神戸アイライト協会に行ってみてくださいと言われました」とお電話いただきます。現在、神戸市より委託いただいている、相談を初めとするトータルサポート事業が見直しとのことで、来年度予算が不透明になっています。ご相談の電話が鳴り響いても、お越しいただいても、相談員がいなければお話をお聞きすることができません。神戸市へ事業の継続を訴えています。活動継続のための力強いご支援も、どうぞよろしくお願い申し上げます。
(和田)
本分終了