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神戸アイライト通信 NO.44 発行:21年1月


新型コロナウイルス感染拡大と協会の活動

理事長  森 一成

2020年11月末現在、新型コロナウイルス感染は第3波といわれる拡大状況にみまわれています。緊急事態宣言、イベント制限は現時点で出ていませんが、ウイルスが一般的に活動的になると言われる冬を迎え警戒を強めています。マスク着用、手洗い・消毒の励行、静かな食事など利用者の皆さんにもご協力いただいて事業を実施しています。引き続き感染予防に努めたいと思います。このような中、新型コロナウイルスに用心しながら行事を再開しています。人数を制限したり、Zoom参加を併用したり、感染対策に配慮し、試行錯誤しながら実施しています。
10月のアイライトフェアに続いて、11月28日にはロービジョンサポートフェアをやはり会場とZoom併用で開催しました。テーマは歩行訓練士養成50周年で、日本ライトハウス養成部の堀内主幹の講演などを実施しました。Zoomイベントは、今まで以上に準備が大変な面もありますが、移動なしで視聴できるところは大きなメリットです。もちろん会場で熱気を共有するイベントを心配なくできるのが望ましいのは言うまでもありません。両方が心配なくスムースにできる状況を待ちたいと思います。「瑠璃色の地球」の歌詞にある「夜明けの来ない夜はない」という言葉を励みに日々を過ごしています。

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新型コロナウイルス蔓延の時代を前向きに

副理事長 山縣祥隆(山縣眼科医院)

副理事長の山縣です。
新型コロナウイルス感染症は一向に衰えることなく、第3波とも言える増加を見せていますが、お変わりなくお過ごしでしょうか。
新型コロナウイルス感染症への対策で、私達の日常生活、社会生活は大きく変わりました。不便なこと、辛いことを挙げればきりがありませんが、一方、生活様式が代わったことで、これまでの生活を見直す良い機会になり、悪いことばかりではないようです。私達はマスクを付けることが当たり前になりましたが、そのお蔭か、インフルエンザに罹ることがほとんどなくなりました。将来、コロナウイルス感染症が減り、再びインフルエンザ対策をしなければならなくなっても、私達はマスク着用に前ほどの抵抗がなくなっていますので、きっとインフルエンザで苦しむ人も減るでしょう。
これまで会社や病院やそれぞれの職場で長時間かけてダラダラ行ってきた会議も、インターネットを利用して効率よく行えるようになりました。私達医学の分野では、全国各地で定期的に学術会議が行われていますが、会議の期間は数日、出席しても同じ時間に別の部屋で平行して講演が行われますので、聞きたい話題をすべて聞くことはできませんでした。ところが学術会議がオンラインで行われるようになり、参加登録をすれば例えば2週間の間、いつでも好きな時間に聞きたい講演を聴くことができるようになりました。
旅行業、飲食業に携わっておられる方々は今、大変なご苦労をされておられますので、有効で安全なワクチンが早く利用できるようになるのを願うしかありませんが、禍転じて福となす、この時代を乗り越え、先々まで利用できる良いアイデアを考えましょう。今回、神戸アイライト協会の2つのイベントがインターネットで全国配信されましたが、最近の医学系学会のように、例えば1か月間、いつでもイベント内容を視聴することができるようになれば、多忙な方でも時間のある時に見ることができますので、もっと素晴らしい、などと考えている今日この頃です。
皆様のご健康、ご安全を心からお祈り申し上げます。

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いまさらですが、歩行訓練士養成開始50周年

理事長 森 一成

会報では「歩行訓練」を何度も取り上げてきました。よく知っているかたも、いまさらのかたも多いかもしれませんが、案外知られていないこともあります。そこで今回は改めて日本での歩行訓練士養成開始50周年で書かせていただきます。
歩行訓練は、1940年代のアメリカで視覚に障害を負った軍人のリハビリテーションとして考案されました。リチャード・フーバー氏の「フーバーテクニック」で、現在も指導されている「2点つき(タッチテクニック)」の誕生です。前方に杖を構え、弧を描くように振り、足を交互に出す技術です。この方法には長くて軽い杖の開発が必要でした。その後、体系化され、主に大学院でオリエンテーション・アンド・モビリティー・スペシャリスト(定位と移動の専門家)が養成されるようになったのです。
この指導方法は、1965年に日本に伝わりました。5年後の1970年、当時の厚生省と文部省の後援で「歩行指導員養成講習会」が大阪の日本ライトハウスで開催されたのです。ここで12名の歩行訓練士が日本に誕生しました。なお歩行訓練士という呼称は修了証には書かれていませんが、修了者を表す用語として当時から使われ視覚障害者福祉の世界では定着してきました。
当初は日本ライトハウスなどの入所施設を中心に歩行訓練士による指導が行われ、次に盲学校でも取り組まれるようになりました。その多くは、施設内や施設周辺でのものでした。その後、在宅福祉重視の流れの中で、歩行訓練士が対象者の自宅などに行く訪問指導が各地に広まりました。これは歩きたい所で練習できるので、訓練終了後すぐに実用化できます。しかし訪問指導は、自治体独自の事業として行われているため、地域格差が大きいです。
なお歩行訓練士の養成は、1990年から国立身体障害者リハビリテーションセンター学院でも始まりました。こちらも30周年になります。日本ライトハウスの調査では、2020年現在960人の修了者がいます。開始時の80倍です。現任者は548人で福祉59%、教育26%、医療9%、その他となっています。
福祉の現任者で訪問指導等の歩行訓練担当は179人いますが、常勤専任は37人だけです。他は常勤兼任、非常勤です。歩行訓練の現状は3つの「ない」です。「事業がない」「あっても十分でない」「知られていない」です。視覚障害者に必要な支援がどこで受けられるかをまとめたスマートサイトの普及などで歩行訓練士のような視覚障害専門家につなぐ動きが広がっています。しかし受け皿と想定されている歩行訓練事業は、十分ではありません。50周年を経た今後は、歩行訓練事業の充実、歩行訓練士の社会的認知が大きく進むことを願っています。

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アイライトフェア2020

副理事長・IT事業部長 飯山知子

10月25日(日曜)、医療イノベーション推進センター(TRI)第1研修室において、「アイライトフェア2020」を開催いたしました。
今回はコロナ渦ということもあり、会場参加人数を限定の上、完全予約制とさせていただきました。また、神戸アイライト協会では 外部向けのイベントとしては初めてのZoomを利用したWeb配信との併用での開催となりました。初めての対応が多く、至らない点も多くありましたが、会場には 視覚障がい当事者の方、ご家族、医療福祉関係者などのご参加でスタッフ含め約60名と密にはならず安心してご参加いただけたかと思います。Zoomでは 日本全国からご参加いただき、約100名と、移動が困難な方、遠方で来場での参加が難しい方からも多くご参加をいただきました。会では、関西での視覚障がい者の理療分野以外の就労の現状を知っていただくと共に、今後の視覚障がい者の就労について共に考える良い機会となりました。
今回は毎年恒例となっております「アイライトアンサンブル」のメンバーによるリコーダー演奏が、コロナ渦ということで盛り込むことが出来ませんでした。残念がる声をたくさん頂戴しております。来年こそは心温まる演奏を期待したいと思います。
講演「関西で理療分野以外の就労を考える」では、日本ライトハウス視覚障害リハビリテーションセンター職業訓練部運営責任者の津田 諭氏から 視覚障がい者が働く為に必要な環境、その為の機関の説明。現在の職業訓練の内容とこれから考えていかなくてはならない問題について。そして、就労支援において大切なポイントと事例紹介など、ポイントを押さえ分かりやすく講演いただきました。
シンポジウムでは、2人のシンポジストから 当事者の立場としての就労状況と取り組みについての話がありました。シンポジストの岡田太丞さんからは、「視覚障害者就労相談人材バンク」についてのご紹介もあり、視覚障がい者の幅広い就労についても聞くことができました。それから公的な障害者の訓練施設や民間への訓練委託制度があるにも関わらず、現況では視覚障がい者には使いづらいため、使えるものにしてほしいという強い訴えがありました。来場者からの質問もあり、視覚障がい者を取り巻く理療分野以外の就労についての意見交換の場ともなりました。
今回初めての試みとなりましたWebミーティングでご参加いただいた多くの方からは、後日メールなどで 熱いご感想や貴重なご意見を頂きました。支援者側からは同じように視覚障がい者の就労支援の難しさや同じように抱える問題点、当事者側からはシンポジウムでの体験談によく分かるというご意見や世間一般の理解の問題など例年より多くの思いを届けていただきました。これらの問題をここで終わらせることなく、問題意識を共有し、世の中に提起していく必要があると感じています。今回、全国からご意見を頂けたことで、視覚障がい者の就労という大きな問題に取り組む心強さを感じました。そして問題に取り組み続けることで、少しずつでも確実に変えていけると信じています。

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ご支援のお願い

2021年の秋頃には新しい会館への移転が予定されています。今よりもずっと広いフロアで、たくさんの方がご利用いただけることになりますが、今でもスタッフが足りずに充分な対応ができていません。気軽にご相談していただける場所であり続けられるよう、あらたな人員確保のためにご支援をお願いいたします。1口3000円の賛助会費またはご寄付を4000口(1200万円)が目標です!無理のない範囲で、よろしくお願い申し上げます。

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秋の歩行訓練のひとコマ

歩行訓練士 住吉 葉月

秋は外歩きによい季節ですが…。新型コロナウイルス対策で外出を控えるあまり、歩く機会も減ってしまい、体力、筋力が落ちてはいないですか?今回は「とにかく歩きましょう!」のお話です。
以前から歩行訓練をしていたAさん。一人暮らしで外出がなかなかできず、ちょっと元気がなさそうな印象でした。またうかがいますと言ったものの、コロナの感染拡大が始まり、歩行訓練は中断に。
季節は秋へと変わり、訓練も徐々に再開した頃、Aさんから電話がありました。
「最近引っ越しをしたから、新しい場所での歩行訓練をお願いしたい」ということで、久々にうかがうと…?
家の前で、表情がいきいきしていて、見るからに元気いっぱい、以前とは別人のようなAさんが待っていてくれました。最近の状況をたずねてみると「秋からガイドヘルパーが使えるようになって、いろんな場所に出かけるようになりました。昔から好きだった劇場に行って、ポスター眺めてお芝居見たつもりになったり、買い物を楽しんだりしています」と、とにかく楽しそうです。
それにしても、ガイドヘルパーを積極的に利用しようと思ったきっかけは?
「今回家族の近所に引っ越してきたんですが、家族が近くだと、ちょっとしたことを頼んだりして、相手の負担になってしまう。向こうも私を頼りにしてしまう。このままではよくない、私の方から自立しなければいけないぞと思って、ガイドヘルパーを利用するようになったんです」そういう事情があったんですね。
一緒に外を歩いてみると、普段たくさん歩いているからか、しっかりとした足取りです。それでも、白杖操作はまだ不慣れなので、白杖を振ると身体が振られてしまうようです。歩行訓練の方も続けていくことになりました。
しばらくコロナは続きそうです。感染対策は怠らずに、なるべく外を歩く機会を作って、身体も心も健康でありたいものです。白杖を使って歩く、誰かと一緒に歩く、良い方法を一緒に考えましょう。ご相談お待ちしています。

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編集後記

2020年は新型コロナウイルス感染拡大により世界中が一変しました。4月に緊急事態宣言が出され、対面での活動を自粛することになりましたがメールや電話での相談が急増しました。通所施設や事務所では向かい合う席の間にシートを張り、マスク着用をはじめ皆さんのご協力により活動継続しています。触れることへの不安や仕切りができたり、間隔をあける等、町の様子が変わったことに気づかず戸惑う方々も多かったと思います。2021年、どうぞご無事で! 早期回復を願います。

(和田)

本分終了