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神戸アイライト通信 NO.39
発行:2018年9月
中山記念会館が移転することになりました!
理事長 森 一成
昨年2017年4月に中山記念会館移転10周年を迎えましたが、今年度になり公益財団法人 中山視覚障害者福祉財団より中山記念会館が移転することが発表されました。
移転先は神戸市兵庫区水木通の神戸市立心身障害福祉センターの跡地です。最寄駅は神戸高速鉄道新開地駅、神戸市営地下鉄西神山手線の湊川公園駅、JR兵庫駅になります。JR神戸駅等の鉄道駅から近くのバス停までバスも出ています。
数年後に新会館を建設し移転する予定ときいています。新神戸付近に活動拠点を移して16年あまり、慣れ親しんできた地域と離れるのは寂しい思いもあります。神戸・兵庫地域のロービジョン、視覚障害の方を支援する体制を広げる・整える移転になることを願っています。
今後、少しずつ移転計画をすすめていくことになると思います。関係の皆様方には移転に際して、ご協力をお願いすることも多々出てくるかと思います。よろしくお願いいたします.
2017年度 まとめ
事務局長 和田眞由美
1.12月に神戸アイセンターがオープン!
眼科専門の病院機能と研究、そしてロービジョンケアのフロア(ビジョンパーク)が一体となった神戸アイセンターが神戸市中央区のポートアイランドにオープンした。ビジョンパークは患者さんや訪れた人たちが必ず通るよう、玄関を入って直ぐのところに配置され、様々なイベントや情報提供、各団体による相談コーナーが設けられている。当協会も12月のオープン当初より毎週水曜日に専門相談員を複数派遣し、12月からの4ヶ月間で114件の相談に対応した。前年度は眼科からの紹介で繋がった相談は1年間で106件であった。病院のフロアー内に相談できる場所を置く効果は大きい。また、見えにくさを感じる早い時期に情報を得られるということで不安の軽減にもなる。ビジョンパークはロービジョンケアの入り口の役割を果たし、そこから神戸アイライト協会の活動拠点である中山記念会館にも繋がり、中山ロービジョンルームで更にゆっくりとお話をうかがい、見えにくさによる困難の改善についてアドバイスをおこなった。医療から福祉へ、他の眼科からも、できるだけ早期に繋がることを期待したい。
2.神戸市の日常生活用具にタブレットが追加!
書類をモニターに映して文字を拡大して見る拡大読書器の給付枠で、神戸市ではタブレットも選択できるようになった。(基準額50,000円、耐用年数4年)
申請に際しては文字を拡大して見ることができること、神戸アイライト協会で講習を受けることが要件となる。
3.みんなの声かけ運動 DVD製作に協力!
駅でのホームからの転落事故が後を絶たない。ホーム柵の設置も少しずつ進んできてはいるが全駅への設置は到底難しい。中山視覚障害者福祉財団を通して兵庫県身体障害者福祉協会より「みんなの声かけ運動」への協力依頼を受け、啓発のDVD製作や公共交通機関および県民の皆様への手びき講習に協力した。
白杖を持って街を歩くと…
歩行訓練士 住吉 葉月
今回は白杖ユーザーさんの体験談をご紹介したいと思います。
数ヶ月前から白杖を使うようになったAさんが当協会に来てくれました。「白杖を持つようになってから起こった出来事がたくさんあって。ぜひ聞いてください」なにやら小ネタをストックしてくれていたようです。
最初は、白杖を持つことにちょっと気がひけていたAさんは「近所や、買い物の時は白杖たたんでしまってたけど、そのうちに面倒になって。ずっと持ったままでいたんです」とのこと。すると周囲の雰囲気や、反応が変わったそうです。
「親切な人にたくさん出会うようになりました。商店街を歩いていると『スーパーの袋破れてるよ』と教えてくれたり。スーパーで袋に詰めている時に、『はいっ!』っておせんべいをくれたり」おせんべいは驚きますね、応援の気持ちでしょうか。私も歩行訓練している時、満面の笑みで飴ちゃんをくれたお兄さんに出会ったことがあります。
「エスカレーターを降りる直前で、誰かが白杖を持ち上げたんです。『ここです』って教えてくれたんだと思うけど、ちょっと怖いですね」白杖をつかまれるより、声かけがあると助かりますね。
駅や電車内でもいろいろ起こるそうです。「電車に乗ったら、高校生の男の子が立ち上がって座席を譲ってくれたみたいなんです。でも、私に譲ってくれたのかが分からない。高校生も無言だし。そうこうしていると、後から来たおばちゃんがすっと座っちゃって。『そうじゃないんだなぁ』その辺に居た乗客のつぶやきが聞こえるようでした」惜しかったですね。高校生の、あと一言が欲しかったですね。
Aさんが穏やかな表情で話します。「私は足も弱いので、とにかく転ばないように、常に気を張って歩いていました。でも白杖があれば、私の代わりに『私、目が悪いんです』と周囲に伝えてくれるので、頑張りすぎず、とても気が楽に歩けるようになったんです。白杖を持つと、いろんな意味で目立ちますし、いいことも、悪いこともあります。それでも、白杖を持つようにしてよかったと思っています」
白杖には、路面の状況を知ったり、障害物から身を守ったりする役割に加えて、周囲に分かってもらいやすくする役割もあります。見えない見えにくい方で、不安な気持ちで街を歩いている方がいたら、白杖を持って歩いてみることを検討してほしいと思っています。その際はお気軽にご相談ください。
白杖歩行指導(訪問・来所)について 詳しくはこちら
拡大読書器について
視能訓練士 常盤直子
拡大読書器は、カメラで写した対象を拡大してモニターに表示する視覚補助具です。拡大だけならルーペでもできますが、拡大読書器だと1台で1.5倍から最大50倍以上まで拡大可能で、実物のカラー映像の他に白黒、白黒反転、黒黄などの色の組合せが選択可能なことなどから、見たいものを十分に拡大し、自分が見やすい条件で使うことができます。選ぶ基準は、ご自身が何を見たいのか、どのような条件で使うかによります。
新聞や文書・写真や図を見たい、書類に住所や名前を書きたい、という希望はよく伺います。使う条件としては、自宅だけでなく会社や学校で仕事・学習の補助として、などニーズは様々です。
読み書きに特化するなら据置型(19~24インチ)、持ち運びしたいなら軽量な携帯型(3.5~10インチ)がお勧めです。
据置型を使う際は、視線は画面に、手は可動式のテーブルの上に置いて下さい。テーブルを動かしながら画面上を移動する文字を見るのがコツです。視線を動かさず固定して、文字を画面に流し込むかんじです。
使う人の視力はもちろん、視野によっても使い勝手は違ってきます。視野が周辺から欠けて中心部のみ残っているケースと周辺視野は残っていても中心部が見えないケースでは拡大率も画面の見る位置も異なります。眼科で受けた視力検査や視野検査の結果がわかればそれを参考に、見える範囲のうち最も感度の良い部分を効率的に使うことも可能です。
当協会ではこの拡大読書器を実際に試して体験していただくため、現在据置型6台、携帯型4台のデモ機を設置しています。視覚障害の手帳があればほとんどの市町村で日常生活用具として申請可能です。
ゆっくりとお話を伺うため、日時のご予約をお願いしています。まずはお電話お待ちしています。
TEL:078-221-6019
【 編集後記 】
6月18日の朝に発生した大阪府北部地震では大きく揺れだした時には全く歩くこともできず座り込んでいました。月曜の休所日でしたので自宅にいましたが、普段であれば通勤電車の中です。多くの方が電車の中に閉じ込められたり、交通機関がストップして長距離を歩かれたとの報道がありました。7月には西日本を中心に広い範囲で豪雨災害が発生。亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに被災地の方々が一刻も早く生活を取り戻すことができるよう心より願っています。当協会では視覚障害被災者支援のため、2018年7月豪雨災害の義援金を呼び掛けています。
(和田)
本分終了