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神戸アイライト通信 NO.38
発行:2018年1月
神戸アイセンター開設! 日本歩行訓練士会も始動!
理事長 森 一成
理化学研究所の高橋政代先生が提唱してきた神戸アイセンターが2017年12月1日にオープンしました。
眼科病院、先端医療の研究施設、神戸アイライト協会等の関係団体が協力するロービジョンケア・スペースのビジョンパークの複合施設です。
当協会は水曜日の11時~16時に複数スタッフをビジョンパークに派遣しています。
当協会の専門相談・訪問指導やリハビリ施設・関係団体に、ロービジョンの方がより早くつながることが期待されています。
12月9日のロービジョンサポートフェアでは、ビジョンパークを運営するNEXT VISIONの山田千佳子事務局長にオープン直後の状況報告も含めて講演していただきました。
改めて分担、連携の重要性を確認しました。
また12月2日~3日に日本歩行訓練士会の研究会が、初めて東京(東京都盲人福祉センター)で開催されました。
関東を中心に全国から多数の歩行訓練士が集まり、満員の会場で「駅での安全対策」等の多くの報告・シンポジウムなどがありました。
こちらも12月9日のロービジョンサポートフェアで、日本歩行訓練士会の堀内恭子事務局長に駅での安全対策、訓練士会の状況報告等を講演していただきました。
これから日本歩行訓練士会の活動が活発になるとともに、歩行訓練士の訪問指導等の視覚リハが全国で広がることを願っています。
新年にあたって
副理事長 山縣祥隆 (山縣眼科医院)
新年明けましておめでとうございます。
2017年11月26日、「神戸アイセンター」がオープンし、式典、内覧会およびシンポジウムが行われました。
出席された方もおられると思いますが、高橋政代先生が行われているiPS細胞を用いた網膜再生医療の基礎研究部門、それを患者様に応用する臨床部門、そしてロービジョンケア部門の3部門がひとつの建物に入った日本で初めての施設で、大いに期待が寄せられています。神戸アイライト協会としても最大限、協力をしていきたいものです。
また本年9月14日~16日の3日間、高橋政代先生を大会長として「視覚障害リハビリテーション協会研究発表大会 in 神戸」が開催されます。
私は副大会長として現在まで、大会の準備過程をみてきましたが、本当に沢山の有益なプログラム、イベントが計画されており、今から大変、楽しみです。皆様もどうぞご期待下さい。
また今年、視覚障害に関する身体障害者等級判定基準の改定が行われるようです。
聞くところでは、これまで問題とされてきた「視力の和」に代わって「良い方の眼の視力」が等級判定に用いられること、また視野障害についても等級判定基準の変更が行われますが、前提として、現在、お持ちの等級は絶対に下がらないように配慮されているとのことです。
最後に、昨年の年頭にも書きましたが、神戸アイセンターは画期的な施設ですが、視覚障害リハビリテーション、ロービジョンケアについては万能ではありません。
神戸アイライト協会をはじめとする兵庫県下の関連施設、団体、ボランティアの方々などが、それぞれの特徴を生かしてますます発展し、実績を上げることによって、神戸アイセンターも有効に機能するようになってきます。
今年一年、健康に気を付けて頑張りましょう。
文末になりましたが、今年が皆さまにとって幸せな一年になりますよう、心からお祈り申し上げます。
神戸アイセンター2階 ビジョンパークがオープン!
公益社団法人NEXT VISION 情報コンシェルジュ 別府 あかね
2017年12月1日、待ちに待った神戸アイセンターがオープンしました。
神戸アイセンターは、眼科領域の研究・医療そして視覚障害者のリハビリ、社会復帰に向けた情報提供などさまざまな支援を行う複合施設です。
2Fに位置するビジョンパークは、みなさんを神戸アイセンターへお迎えする玄関口として、見えない・見えにくい方だけでなく、すべての方に「眼」や「見え方」に関する情報をお届けし、ロービジョンケアの普及を目指します。
ビジョンパークはオープンと同時に完成するわけではなく、常に進化しながら、視覚障害の方や眼の病気で不安な方が安心できるユートピアを作りたいと考えています。
みなさんのアイデア次第でどのようにも変化し世界にひとつしかないビジョンパークをともに創りあげていきたいと考えています。
また、あえて段差などのバリアを作り、それらのバリアにどう対応していくかということを自然に考え学ぶことができる空間でもあります。
ビジョンパークのフロアでは、ロービジョンケアやリハビリの入口の情報をお伝えする場であり、それぞれの地域にある支援機関と連携を行っていきます。
現在は7団体の方が日替わりでフロアの相談を担当しており、神戸アイライト協会の方には毎週水曜日の相談を担当していただいております。
兵庫県の視覚障害リハビリや相談の中核である神戸アイライト協会とは、これからも連携をとりながら兵庫県のロービジョンケアや視覚障害リハビリの情報を発信し、それらの波を全国に広げて行きたいです。
アイライトフェア2017開催
事務局次長 原 志治
10月8日(日曜)、神戸市立葺合文化センター大ホールにおいて、「神戸・兵庫での医療と視覚リハの連携」をテーマに、アイライトフェア2017を開催。
視覚障害をお持ちの当事者の方、医療関係者の方、関係者などのご参加でスタッフ含め約120名の盛況であった。
オープニングは、例年通りアイライトアンサンブルの演奏でスタート。
今年はステージ上ではなく、フロアで演奏をするという初めての試みを行った。
客席との距離感も少なくなり、参加者からも好評であった。
まず医療講演として、山縣眼科医院院長で、神戸アイライト協会副理事長でもある山縣祥隆先生による医療講演が、「ロービジョン最近の話題」というテーマで行われた。
講演の中で、昨年も話題提供していただいた身体障害基準見直し作業のうち、視野障害の紹介をしていただいた。
視野障害を決めるときに用いる検査方法について、現在の「動的視野計」だけではなく、「静的視野計」の検査結果も基準として用いる、という紹介がなされた。
更に最近特に話題になっているiPS細胞を用いた治療について、加齢黄斑変性症に対する治療例について紹介が行われた。
今後の課題として、遺伝子治療の問題が出され、来年の医療講演がまた楽しみになった。
講演では、「神戸アイセンター ビジョンパークの紹介」というテーマで、NEXT VISION情報コンシェルジュの別府あかね様より、2017年12月オープン予定の神戸アイセンタービジョンパークの紹介をしていただいた。
ビジョンパークはアイセンターの2階に位置し、ほとんどの患者さんはビジョンパークを通って眼科に通院するという事などが紹介された。
別府さんの娘さんがスライド係を担当してくれ、非常にかわいらしくパソコンを操作していた。
報告では、「協会活動紹介」として事務局長の和田より、トータルサポート事業が10年目を迎えたこと、専門相談員を今年度から1名増員したこと、認定NPO法人取得は残念ながらできなかったことなどが伝えられた。
パネルディスカッションでは、「神戸・兵庫での医療と視覚リハとの連携」をテーマに、実際に視覚リハの現場で支援にあたっているパネラー3名と山縣先生、別府さんにパネラーとなっていただいた。
コーディネーターは当協会理事長森が担当した。
まず森より、神戸の視覚リハの歴史について述べた後、各パネラーがそれぞれの立場からの活動紹介等を行った。
1人目のパネラー日本ライトハウス中川典子様より、日本ライトハウスで行われているリハビリテーションについて紹介があった。
リハビリテーションセンターでは機能訓練を実施しているが、それ以外にも訪問訓練、盲導犬訓練、訓練士の養成事業など多角的な運営が行われていることが参加者に紹介された。
次に、神戸視力障害センター支援課長有馬昭郎様より、神戸視力障害センターで行われている視覚リハの紹介がなされた。
日本ライトハウスと同じく機能訓練を行っていること、視覚障害者の職業として広く認知されている理療教育を実施していることが紹介された。
3人目のパネラーとして、神戸アイライト協会専門相談員常盤直子より、アイライト協会での取り組みが紹介された。
特に相談事業では、電話・メール・来所での相談を受けていること等が報告された。
常盤は医療機関での勤務経験があるので、医療の現場ではなかなかできない時間をかけた相談がアイライトでは可能である、という事を参加者に伝えた。
4人目のパネラーは別府様。
数年前まで高知県で在宅の視覚リハに関わっていたころと比較して、神戸は視覚リハのリソースが充実していることが紹介された。
それぞれの機関の連携をもっとうまくとっていけば、患者さんにとってより良い視覚リハサービスを提供できるはず、という提言もなされた。
特に、アイセンターオープンに合わせ、眼科医にも連携の輪に入ってもらえるよう働きかけていく、という事であった。
最後のパネラーは山縣先生であった。
神戸の視覚リハの歴史を時系列で伝えられた。
来年、2020年と神戸で視覚リハに関する全国大会や学会が開催されるので、今後多くの眼科医が視覚リハに参加してもらえるであろうという希望のある話がなされた。
フロアからは、ホーム転落事故についても取り組んでほしいという要望などが出された。
最後は、アイライト新神戸利用者の伴奏による「翼をください」を参加者全員で合唱し閉会となった。
今回のアイライトフェアでは、各方面から来賓の方にご臨席いただいた。
皆様大変ご多忙の中、また貴重な日曜日にも関わらず閉会までフェアに参加していただいた。
ここに改めて謝意を示したい。
ルートの使い方あれこれ
歩行訓練士 住吉 葉月
今回は「訓練で練習したルートを実際に歩くかどうか?」という、ややきわどい?テーマについて書いてみます。
「歩くために練習するんだ、当然じゃないか」と思われるかもしれませんが、必ずしもそうでもないと考えています。
通勤でどうしても必要、ゴミ出しが自分で出来たら他人に頼まないで済む、すぐには使わないけど一応練習しておいて、必要になった時に歩く…その方の必要度によって異なると思うからです。
ちょっと内気の若い女性Aさんと、病院受診のための通院ルートを練習した時のことでした。
駅のターミナルまで移動してバスに乗り、病院前で降りて病院受付まで歩きます。
数回繰り返し練習して「慣れたので、一人でも来られると思います」とのことでした。
積極的に外に出るタイプではないAさん、私としては「通院はご家族と一緒だし、いざという時に使えたらいいかな」くらいの気持ちでいました。
ある時「今月は受診あったの?」とAさんに聞いたところ「この間、一人で行ってみました」と返ってきたのです。
私はビックリして「え?Aさん一人で?無事に行けたの?」Aさんは「はい、でも帰り道で迷いました」と笑いながら答えます。
「バスを乗り間違えたんですけど、終点で降りて、その辺にいたおじさんに声かけて、帰るためのバス停を教えてもらいました」
内気なAさんが自分で通りすがりの人をつかまえて、道を尋ねて、帰った…。
練習したことを実際に使ってくれてうれしいと思うと同時に、歩行訓練で「度胸」のような、生活していく上で必要なものを身に付けてもらっているんだなと感じました。
もちろん、一人で歩かなくても、自分の中に地図を作っておくことで、ガイドヘルパーさんと歩く際に現在どの辺を歩いているかイメージできたり、道順を説明できたりするので助かるという話も聞いています。
歩行訓練士は、見えない見えにくい方にとって分かりやすい方法で、地図やルートを作るお手伝いをします。
あなただけの、使いやすい地図やルートを一緒に作りませんか?お気軽にご相談ください。
【 編集後記 】
神戸アイセンターという先進的な取り組みによって、医療から福祉へ早く繋がってくださることを期待するとともに啓発活動もおこなって参ります。
11月には医療関係者を対象とした研修会を開催し、歩行訓練について歩行訓練士と実際に訓練を受けた方のお話をお聞きいただきました。
神戸・兵庫における支援体制の充実についても引き続き行政に求めて参ります。
今後ともご支援ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
(和田)
本分終了