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歩行訓練士の役割

●歩行訓練士は何をする人

誘導ブロック練習の様子歩行訓練士は視覚障害の方に歩行指導をする専門職です。
歩行指導員、視覚障害者生活指導員と呼ばれることもあります。

歩行訓練士が指導するのは白い杖(白杖)で外を歩く方法が中心ですが、他に人と歩く方法(手引き)、屋内をひとりで歩く方法(単独歩行)、ロービジョンの人には目を活用する歩行方法も教えます。
また歩行以外の視覚障害リハビリテーション(見えにくい、見えない状態での生活改善、視覚リハとも呼ばれる)についても学んでいます。

歩行訓練士は、盲学校や視力障害センター、日本ライトハウスなどの視覚リハ施設で主に指導しています。

従って困っていることの相談をきいたり、日常生活動作、ロービジョン機器の使用、パソコンなどの音声機器の使用、点字やハンドライティング(文字を書く)などの相談を聴いたり、指導をしたりもします。
情報提供、施設・団体の紹介、福祉制度・福祉サービスの紹介などもしています。

歩行訓練士がこういった視覚障害リハビリテーションを行っている施設・団体では、歩行訓練士以外にも相談員や視覚リハの担当者(パソコン、点字など)を配置していることも多く、多彩な指導・情報提供ができます。


視覚障害から歩行困難となった場合、通常は半年や1年以上そういった施設で指導を受けることになります。

しかし、多くの人は半年以上も家を離れて指導を受けることは難しく、それともうひとつ問題なのは、たとえ施設で歩行指導を受けても自宅へ帰ると道の状況が異なるために歩けないということです。
施設で練習した道とランドマーク(杖等で確認できる物)や周辺情報が異なるために、こういったことは当然起こります。

歩行訓練士には先に述べた施設に入所、通所している人を指導している者が多かったのですが、在宅の視覚障害者を訪問して指導する者(訪問型歩行訓練士)が増えてきました。

実はこの訪問型の歩行指導で、上記の問題の多くが解決可能です。


●歩行訓練士による白杖歩行訓練とは

横断歩道利用練習の様子実際は盲導犬で歩いている人より歩行訓練士の指導で歩いている人のほうが多いにもかかわらず、白杖練習(歩行訓練)があることや指導する歩行訓練士の存在はまだまだ知られていません。
盲導犬は小学生でも知っていますが、歩行訓練士は福祉関係者ですらほとんど知られていないのが実情です。

視覚障害者の2大困難は情報入手と移動と言われています。
目が不自由になったとたん歩行をあきらめる人もいます。
家族も心配して外に出さないこともあります。
しかし、家の中でばかりすごすと、心身によくないのは他の障害者や高齢者と同じで、移動の権利確保は車椅子の方などと同様、切実な問題です。

ただ目の情報で歩いてきた方にとって、目を使わない(あるいはほんの少ししか使わない)方法での歩行は容易ではありません。
しかしあまり知られていませんが全盲でも白杖で歩く方法はアメリカでは第2次世界大戦のころから開発され、専門のスペシャリスト(歩行訓練士)によって指導されてきました。
日本でもアメリカの歩行訓練士の指導のもとに、1970年から養成が始まり、現在、約500名の有資格者が従事しています。

下肢の身体障害者は理学療法士等のリハビリテーションによって、機能回復して歩く力がつくことは知られています。
視覚障害でも歩行訓練士の適切な指導(リハビリテーション)で、歩く力がかなり回復する可能性があるのです。
下肢障害者の場合もマンツーマンになるほど効果があると思いますが、視覚障害者の歩行指導は原則的にマンツーマンです。
それは安全上の理由と、一人一人が歩くときに必要な視覚以外のてがかりになる物(ランドマーク)や必要な情報(足元、前方、上部、周辺部、音声情報)などが、それぞれの歩きたい道や歩行状況により異なるためです。

一般の人の視覚に頼るランドマークと、視覚以外のランドマークは大きく異なります。
そのためこういった視覚以外のランドマークの発見や情報提供は家族を含め一般の方には非常に困難です。
これらのランドマークや情報をつなぎ合わせ、組み立てて視覚障害者は歩くことができるのです。
そのランドマークを教え、つなぎ合わせ、組み立てるのを助けるのが歩行訓練士です。

白杖歩行指導(訪問・来所)


歩行訓練士スーちゃんとの街歩きコラム♪

目が見えにくく、見えなくなると外出できなくなるのかな、こうした不安を取り除いてくれるのが歩行訓練です。
その魅力を、体験者の声を交えて発信しています。

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