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神戸アイライト通信 NO.36
発行:2017年1月


視覚障害リハビリテーション普及のために

理事長  森 一成

神戸市の理解のもとに歩行訓練(歩行訓練士による白杖歩行等の指導)が少しずつ広がっています。
この歩行訓練も視覚障害リハビリテーションの一つです。
視覚障害により失われた生活能力等を回復(あるいは獲得)する取り組みが視覚障害リハビリテーションです。
しかしながら歩行訓練をはじめとする視覚障害リハビリテーションは、十分利用されていない状況です。
さらに言うと、まだ十分に知られていない状況です。
多くの人が視覚障害になると歩けない、読み書きできない、生活能力や仕事の能力がないと思っています。
できる人を知っても、たまたま特殊能力の持ち主、まれな超人的な人と思われることがよくあります。
視覚障害には誰でもなる可能性があります。
それと同時に視覚障害リハビリテーションで誰もが歩行能力、読み書きの能力、仕事をする能力、生活を楽しむ能力を回復・獲得する可能性もあります。
もちろん簡単にできる事だけではなく、難しいこともあります。
しかし全ての人に可能性にチャレンジする機会が与えられるべきです。
そのためには次の3つが必要です。

1.地域に歩行訓練士等の視覚障害リハビリテーション担当者を常勤配置した訪問指導、専門相談等の自治体事業があること
2.その事業を実施する歩行訓練士等の人材を適切に配置した団体(施設)があること
3.事業実施団体、自治体、眼科等の医療福祉関係者で活発な啓発活動があること

この3つがそろったら地域の視覚障害リハビリテーションは大きく発展できることでしょう。

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新年にあたって

副理事長 山縣祥隆 (山縣眼科医院)

新年明けましておめでとうございます。
昨年は世界中で異常気象が発生し、日本でも地震が頻発するなど何か落ち着かない一年でしたが、今年は平穏な一年になることを祈らずにいられません。
さて新年ですので明るい話題をお届けします。
実はこれからの4年間、兵庫県のロービジョンケアが大いに盛り上がる出来事が3つも控えています。
まず今年、兵庫県ではエポックメーキングな施設「神戸アイセンター」がオープンします。
高橋政代先生が行われているiPS細胞を用いた網膜再生医療の基礎研究部門、それを患者様に応用する臨床部門、ロービジョンケア部門の3つが併設する世界で初めての施設で、世界的に注目されています。
次の2つはロービジョンケアについての研究、学会活動についてです。
現在、日本には視覚障害リハビリテーション協会日本ロービジョン学会の2つの団体がありますが、まず来年2018年の視覚障害リハビリテーション協会研究発表大会は高橋政代先生を大会会長として神戸で開催されます。
私は高橋先生からの依頼で大会副会長を務めることになりました。
また私が創設以来理事を務めている日本ロービジョン学会の学術総会については私が強く働きかけ、東京オリンピックが開催される2020年、やはり高橋政代先生を会長として神戸で開催されることがほぼ決まりました。
神戸での開催は2005年に私が会長を務めて開催されて以来15年ぶりとなります。
埼玉県の国立障害リハビリテーションセンター病院眼科の仲泊聡先生も昨年、理化学研究所に赴任されて来られましたので、このお二人がタッグを組んで学術総会を企画、運営して頂けることになりました。
こう書いてくるとすべてに高橋先生が関係していることが分かり、改めて彼女のすごさが分かりますが、兵庫県に住んでいる私達は、その恩恵に与らない手はありません。
研究発表大会や学会では全国あるいは世界中で注目されている研究を知ることができ、また最新の視覚補助具や福祉用具なども展示されることになるでしょう。
本協会でもこの3つについての情報は皆様に配信すると思いますので是非、ご注目下さい。
ただし最後にひとつ、神戸アイセンターと言えど、すべての視覚リハ、ロービジョンケアを行うことはできません。
本協会はもちろん、視覚障害に関わるすべての団体、施設がそれぞれの特徴を自覚し、それぞれが高い目標を掲げて成長し、神戸アイセンターとの相互協力で兵庫県の視覚リハを進めていかなければなりません。
皆さん、今年も頑張りましょう。
文末になりましたが、今年が皆さまにとって幸せな一年になりますよう、心からお祈り申し上げます。

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駅の安全対策(ハード面とソフト面)

理事長 森  一成

駅ホームでの視覚障害者等の転落事故が続き、メディアでも最近よく安全対策が取り上げられています。
対策としてハード面ではホームドアの設置、視覚障害者への積極的な声かけが呼びかけられています。
どちらも当然、非常に重要なことには間違いありません。
ハード面でのホームドアは安全性が高く、設置を加速していただきたいものです。
しかし億単位といわれる経費等の問題もあり、速やかな整備は難しい現状があります。
ハード面では他には点字ブロックなども言及されています。
ホーム内側を表示する内方線は、少しずつ普及してきました。
それに加えて広いホームではホーム中央に誘導線状ブロックをつけることが望ましいと思っています。
それからドアが決まっている駅では固定柵も有効だと思います。
さらに検討をすすめていただきたいことに「島型ホームを岸型ホームに」変更です。
ホームの両側に線路のある島型ホームは誰にとっても危険です。
片側が壁の岸型ホームにしていただければ安全性が非常に高まるはずです。
特に幅の狭いホームで早急に検討されることを望みます。
アイライトの最寄り駅の阪急春日野道駅も狭い島型ホームなので、岸型ホームへの変更検討を阪急電鉄をはじめ関係者にお伝えしています。
ソフト面では「駅ホームへのスタッフ配置」です。
昔はホームに駅員さんが、あたりまえのようにいたように思います。
今は大きな駅やラッシュ時しかスタッフがいないように感じます。
ホームにスタッフがいることで安全性は非常に高まると思います。
最後に視覚障害、ロービジョンの皆さんに安全対策として歩行訓練士による歩行指導「歩行訓練」を学んでいただきたいと思います。
歩行訓練には安全な駅での移動、転落を防ぐ電車乗降の技術があります。
視覚を使って利用できる人、あるいは学ばなくても使い慣れているので利用できている人も、まだ歩行訓練士の歩行指導を受けていない場合は、ぜひ一度受けてみてください。
そしてお住まいの地域に歩行訓練士の訪問指導事業があれば、使う駅で一度見ていただくこともされるとよいと思います。
さらに安全で効率的な駅の利用ができるかもしれません。
ハード面、ソフト面の両方で安全対策が進み、「欄干のない橋」といわれる駅が「安全な橋」へと変わっていってくれることを願っています。

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アイライトフェア2016開催

事務局次長 原 志治

10月23日(日曜)、神戸市立葺合文化センターにおいて、「中途視覚障害による離職を考える」~視覚障害になっても働けるためのリハビリテーションとは~をテーマに、アイライトフェア2016を開催。
視覚障害をお持ちの当事者の方、医療関係者の方、関係者などのご参加でスタッフ含め約120名の盛況であった。
アイライトアンサンブルによるさわやかな演奏で開幕。
開始直後会場を覆っていた緊張感がほぐれてアイライトフェアにふさわしい幕開けとなった。
まず医療講演として、山縣眼科医院院長で、神戸アイライト協会副理事長でもある山縣祥隆先生による医療講演が、「ロービジョン最近の話題」というテーマで行われた。
講演の中で、現在厚生労働省が中心となって行っている身体障害基準見直し作業のうち、視覚障害領域において実際にどのような作業が行われているか、の説明がなされた。
具体的には、視野検査の測定方法の変更と、現在は両眼の視力の和で求められている視力値を、より現実的な視力値で障害認定する方向で議論が進んでいることが紹介された。
また、医療とリハビリテーションを結ぶスマートサイトと呼ばれるものが、先生が把握しているだけで14都道府県に広がっていることが報告された。
兵庫県では「つばさ」という愛称がつけられており、実際に医療とリハビリテーションを結ぶツールとして使用されている、と紹介があった。
講演では、「国立吉備高原職業リハビリテーションセンターの紹介」というテーマで、同センター上席職業訓練指導員大内朋恵様より、特に休職・求職者に対するリハビリテーションを中心にセンターでの訓練内容についてお話をいただいた。
全体的に休職者に対する支援体制は現状十分でないこと、休職中に上手く職業リハビリテーションに移行出来れば、復職支援まで道筋がつけられることなどが語られた。
報告では、「神戸市に常勤専任訪問指導員(歩行訓練士)配置」について、事務局長の和田より、昨年度180件以上の訪問訓練を実施したが、訪問希望の方はまだまだおられるので、それに応えるためには複数の指導員配置が必要である、との説明がなされた。

パネルディスカッションでは、実際に視覚に障害を持ちながら就労している当事者2名と、山縣先生、大内氏で視覚障害を持ちながら就労するための
リハビリテーションについて、それぞれの立場で話がなされた。
まず、視覚障害当事者である中野規公美(神戸アイライト協会相談員)より、これまでの就労相談を通じ、就労を継続していく上で必要な用具の活用方法や、関係機関との連携の大切さについての問題提示がなされた。
続いて同じく視覚障害当事者である赤堀浩敬氏(HOTPOTの会、産業カウンセラー)より、視覚障害を持ちながら就労している方々が職場内で孤立しないよう、当事者等が連携してネットワークを作り、サポート体制を構築していく重要性が実例を交え語られた。
次に、支援者の立場から大内氏より、特に休職中に適切な職業リハビリテーションを受けられれば、スムーズに復職できるが、現状は求職者へのプログラムが多く、休職者への復職プログラム構築が必須であるとの説明がなされた。
最後に山縣先生より、視覚障害に起因して退職した場合、全体として膨大な額の社会的損失が発生する事が具体的な数字を挙げて説明され、視覚に障害を持った後も引き続き雇用を継続していける環境づくりが大変重要であるとの指摘がなされた。
全てのパネラーから発表が終わった後、フロアからの意見を求めたところ、
障害者の法定雇用率は現在2%になっているが、この数字は全ての障害者を対象としたものであり、視覚障害に限ってみるととても2%という数字には届かない。
法定雇用率を各障害別に設定する必要があるのではないか?との問題提起がなされた。
今回のパネルディスカッションは、各パネラー、会場の参加者から様々な意見が出され、予定された時間をオーバーするといった白熱した内容となった。
最後は、アイライト新神戸利用者の伴奏による「翼をください」を参加者全員で合唱し、パネルディスカッションでやや過熱気味になった会場を良い意味でクールダウンさせ、参加者が一体感をもって閉会となった。
今回のアイライトフェアでは、各方面から来賓の方にご臨席いただいた。
皆様大変ご多忙の中、また貴重な日曜日にも関わらず閉会までフェアに参加していただいた。
ここに改めて謝意を示したい。

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晩秋の歩行訓練、感じたこと

歩行訓練士 住吉 葉月

外歩きにふさわしい気候になり、ここ最近は毎日、神戸のどこかをてくてく歩いています。
ひんやりした空気、鮮やかな紅葉などを感じながら歩くのは、この仕事のささやかな楽しみです。
さて「歩行訓練」と聞くと、何か堅苦しいことのように感じる方もいるかもしれませんが、実際はごく身近なことだったりします。
この秋から歩行訓練をスタートした女性の目標は「自宅マンションから、一人で外へ出ること」です。
半年前に今のお住まいに引っ越してきて以来、自分一人では外に出られなくなってしまった、せめて1階エントランスまでは自力で移動して、待ち合わせできるようになりたいというご希望です。
「帰ってきた時も、エレベーター前で『ここまでで結構です』とか言えたら、カッコイイですよね?」と聞くと「言ってみたい!!」とやる気も十分です。
白杖を振って歩く、頭の中に地図を描いて移動する。
初めてのことばかりです。
繰り返し練習しながら「自分の足で歩くのって、大事ですね。ようやく、住んでいるマンションの形が分かってきました」と話していました。
一緒に歩いている時に、ぽつりぽつりと気持ちを聞かせてもらえます。
歩行訓練を受けようと思ったきっかけは
「ふと、すべてを人任せ、人頼りにしている自分に気付いたんです。何か自分で出来ることを…と思い、歩行訓練を申し込みました」
とのことでした。
「ここまでなら自分で出来ると思えることをもつことは、その人の強みとなり、自信となりますね。大事なことだと思います」
と伝えました。
また、娘さんに白杖の練習をしていることを話したら
「ママ、やっと人間になったね」
と言われたそうです。
「それまでは、一体何だったの?」
「…肩に止まってるオウムかな」
となかなか鋭い(?)返答だったそうです。
見えにくくなってからずっと誰かの腕につかまって歩いているけれど、久々に誰にも頼らずに踏み出す一歩は、きっと大きいものなのだろうなと、隣を歩きながら感じています。
自宅まで戻って2人で拍手、
「楽しかった!夢みたい!」
と笑顔です。
「いえいえ、まだマンションの外にも出てないから(笑)これからですよ!」
ガイドヘルパーやご家族と歩くなど、いろんな方法があってよいと思いますが、それでも一人でも多くの人に「自分で歩く喜び」を体験してほしいと願っています。

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【 編集後記 】

神戸市委託のトータルサポート事業に歩行訓練士1名分の予算がつき、ご自宅等へ訪問して歩行訓練をおこなっています。
記憶や感覚を積み重ねて安心安全に歩けるようになるためには日を空けずに訓練することが大切です。
しかし、次回の訪問を少し先にお待たせするような状況になってきました。
一歩踏み出そうと思われた時に歩行訓練がすぐ開始できるよう、引き続き神戸市に歩行訓練士の複数配置を求めていきます。
皆様のご支援のもと継続させていただいている神戸市外の方々の無料相談も増加しています。
これに対して兵庫県の支援が全く得られていないことも大きな課題です。
本年も力強く取り組んで参ります。

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