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神戸アイライト通信NO.34
発行:2016年 1月

神戸・兵庫のロービジョン・視覚障害支援の転換点

理事長  森 一成

前回33号でお伝えしましたように兵庫県内で初めて、神戸市に常勤専任の訪問指導員(歩行訓練士)1名が配置されました。
11月末で25名100回と、ほぼ予想通り利用していただいています。

地域でのロービジョン・視覚障害の方の支援には、3つのサポートが重要です。
1つは眼科での相談先等の情報提供(ロービジョンケア)、次に専門家のいる視覚障害専門相談事業や入所・通所のできる視覚障害リハビリテーション施設、そして3つ目に自宅や勤務先等に簡単な申し込みで訪問指導員(歩行訓練士等の専門職)が来てくれる訪問指導事業。

兵庫県眼科医会が紹介リーフレット「つばさ」を発行するなど眼科でのロービジョンケアは先進的な取り組みがなされていました。
さらに2017年には研究、病院(眼科)、ロービジョンケアを一体化した神戸アイセンター(仮称)が実現予定です。
眼科患者さんへのサポートが進展するかと思います。
神戸アイセンター(仮称)と連動して訪問事業などもさらに発展すると、神戸・兵庫のロービジョン・視覚障害サポートは望ましいシステムになるでしょう。
ここ数年がその転換点かと考えています。
よりよき転換点になるように努めます。
2016年もよろしくお願い申し上げます。

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◆安全に、安心して利用できる施設に

専門相談員  中野 規公美

日頃より当協会の活動にご理解、応援くださり有難うございます。

当協会にお越し頂く際、利用される交通機関に阪急春日野道駅と地下鉄新神戸駅、そして市バスでは雲中小学校前停留所があります。

「白杖で安全に安心して仲間と一緒に神戸アイライト協会を利用したい。
」との伊丹市など市外利用者の方々の≪声≫から始まり、その≪声≫は他の利用者の方へと広がっていきました。

その結果、皆様のご協力のもと点字ブロック設置の運びとなりました。

以前よりありました地下鉄新神戸駅ルートに加え、昨年度から工事が始まり、今年度11月末には阪急春日野道駅と市バスの雲中小学校前停留所にも設置されました。

これで全てのルートから点字ブロックに沿って来訪可能となりました。

相談来訪された方々に、「迷わず来られましたか?」とお伺いした折、「点字ブロックに沿って来たから大丈夫でした。
」とのお返事に(本当に良かった)と私も嬉しくなります。

私も弱視ですので慣れない場所への移動は、苦手です。
ぶつかる、落ちる、迷うの3点はできれば避けたいと強く思っています。

さらに、昨年2月より、地下鉄新神戸駅利用の際、横断する布引交差点(南北方向)に、兵庫県下で初めてエスコートゾーン(視覚障害者道路横断帯)が試験設置されました。
白杖単独歩行の方は「横断しやすくなった。
」歩行訓練中の方は「安心して速やかに横断出来るようになった。
」と。

市外からも当事者団体より体験横断に来られました。

今後も、皆様に安心して安全にご利用頂ける神戸アイライト協会で在りたく思います。
エスコートゾーンの本設置を願っています。

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◆新年にあたって

副理事長 山縣祥隆 (山縣眼科医院)

新年、明けましておめでとうございます。
スーパー・エルニーニョ現象とやらの影響で日々、寒暖差が激しく、体調管理の難しい日々が続いていますが、お変わりありませんか。

昨年の新年ご挨拶で、神戸アイライト協会の創設は日本ロービジョン学会の創設、そして私のロービジョン活動の開始とほぼ同じ時期であり、眼科サイドからみると、当協会は日本のロービジョンケアの時流にのって活動を続けてきたと書きました。
協会の強みである相談業務は、兵庫県におけるロービジョン活動を支えてくれていますし、兵庫県が全国でも5本の指に入るロービジョンケア普及地域になりましたのは、協会の活動のお蔭です。

ただしもうひとつ思いがけないラッキーがありました。
今や時の人である高橋政代先生が神戸の理化学研究所に赴任されたことです。
できるだけ多くの方にロービジョンケアを紹介するためのリーフレット「つばさ」の作成にあたっては、高橋先生が当地に来られて間もない頃に関わって頂き、貴重なご意見を頂きました。

高橋先生は「全世界が注目しているiPS細胞による網膜疾患の治療は画期的な治療法ではあるけれど、ロービジョンケアとペアで考えないといけない」とお話しされています。
そのために神戸アイセンター(仮称)を設立し、医療・研究・福祉の連携と融合を目指すという計画が進んでいますが、その計画の中で、視覚に障害のある方々の就労支援のためのツール開発が進められており、当協会の森さんと私もその計画に参加しています。
目が見にくくなって仕事に支障が出てきた方が、就労を続けるためにどうすれば良いか、新たに仕事を見つけるにはどうしたら良いかの道標となるツールを開発中です。
将来は全国的に普及することを目的としていますが、現時点では兵庫県版を作成中で、兵庫県でのロービジョンケアがまた一歩、進化すると感じます。

目の見にくい方々が社会復帰するために利用して頂くツールとして、兵庫県には「つばさ」と、ロービジョンケアを行う医療機関リストである兵庫県ロービジョンマップがありますが、このようなツールは多ければ多いほどよい、というのが私の信条です。
そのために私はあと2つのアイデアを持っており、計画を進めていく予定ですが、私にとって貴重なのは、会員の皆様のご意見です。
こんなものがあれば便利である、というご意見がありましたら、是非、ご意見下さい。
理想的なツールを開発していく眼科医の仲間が全国にいますので、例え兵庫県あるいは私には実現できなくても、他の地域、他の先生なら実現可能かも知れません。
是非、ご意見を宜しくお願いします。

文末になりましたが、今年が皆さまにとって幸せな一年になりますよう、心からお祈り申し上げます。

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◆アイライトフェア2015開催

事務局長 和田眞由美

10月11日(日曜)、神戸市立葺合文化センターにおいて、「兵庫県内で初めて神戸市に常勤専任訪問指導員(歩行訓練士)を配置!」をテーマに、アイライトフェア2015を開催。
眼科スタッフ、患者様、関係者と多彩な方々のご参加でスタッフ含め約120名の盛況であった。

アイライトアンサンブルによる和やかな演奏で開幕。
続いて、先端医療センター病院眼科医長、平見恭彦先生による医療講演が行われた。
現在行われている加齢黄斑変性症に対するiPS細胞を使った治療を中心に、今後どのように研究を進めていくかを、お話いただいた。
また、医療とロービジョンケアを並行して行う神戸アイセンター(仮称)計画については、「病院の中にアイライト(協会)の出店のようなものがあれば帰りに寄ってもらえて、ロービジョンケアへと進むきっかけになるのでは」と、計画を進めていることが語られた。
必要な方には、治療と並行して少しでも早く福祉へ繋げるという動きを、広く示したいという思いが感じられた。

パネルディスカッションでは、実際に訪問訓練を行っている歩行訓練士と訪問訓練を受けた経験のある当事者、会場も含めて活発な討論が行われた。

利用者の益田勢津子さんは、自宅から職場までの道で訓練を受けたことで、安心してラクに歩けるようになったと感謝を述べた。
同じく利用者の熊澤明さんは、アイライトへのルートや三宮へのルート等で訓練を受け、行きたい時に行きたいところへ行ける範囲が広がったことでの「ひとりで歩く楽しさ」を、明るく語った。

県内で初めて神戸市に専任配置された当協会の歩行訓練士、住吉葉月は、「訪問することで、その人の暮らしぶりや困っていることが一目でわかる。
お話では浮かび上がってこないお困りごとにも提案できる」と報告。
また「うつむいて歩いていらした方が、背筋をピンと伸ばして、さっそうと歩いて行く。
まさに変身していくところを、何回も見せていただいた。
これは歩行訓練士をしていて良かったな、と思う瞬間である。
神戸市で認められたということで、多くの方に知っていただいて、少しでも外で楽しく歩く方が、増えてもらえたら良いなと思っている」と語り、さらに、ひとりでは歩かないという方には、ガイドさんと安全に歩くための「手引きの受け方」も練習していると紹介した。

同じく歩行訓練士の堀内恭子さん(日本ライトハウス)は、生活訓練は、歩行、コミュニケーション、日常生活と分かれているが、実際の生活で分かれていることはないので、トータルに支援していくことが大事と思うと語った。

神戸市において歩行訓練士1名が配置され、当協会では、ようやく「訪問できます!」 と、言えるようになった。
しかし、神戸市には、視覚の身体障害者手帳をお持ちのかたが、約6千数百名もおられる。
本格的に訪問するためには、1名では、まだまだ充分な対応ができない。
大きな一歩を踏み出せたことに感謝し、一人でも多くの視覚障害者が、訪問での歩行訓練や生活訓練を受けられるような体制を、今後も充実させていきたい。

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◆神戸市からのお知らせ

2016年1月、マイナンバー制度が始まります。
9月と11月の神戸市広報と合わせて配布されたマイナンバーのガイドブックについて、神戸市で作成された点字版と音声版(CD)を数部お預かりしています。
必要な方はご連絡ください。

神戸アイライト協会 担当:和田  電話 078-252-1912

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◆速水基視子さんが、逝去されました。

「キミちゃんのえがお」などの著者として知られる速水基視子(はやみきみこ)さんが、9月18日にクローン病からの敗血症で逝去されました。
47歳でした。
ご主人で歩行訓練士の

速水洋(はやみひろし)さんとともにご講演にお越しいただき、スタッフ一同大変勉強をさせていただきました。

謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

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◆点字ブロックのお話

歩行訓練士 住吉 葉月

今回は、点字ブロックについて綴ってみたいと思います。
(この号が点字ブロック特集みたいになっているかもしれませんが、偶然です)

点字ブロックを利用して歩く方は、どのように使っていますか?点字ブロックの上を歩く方法、点字ブロックの脇に立ち、白杖の石突きで伝いながら歩く方法、点字ブロックを「見ながら」歩く方法など、いろいろあるかと思います。
私が「なるほど」と思った、印象的な使い方をご紹介します。

視野障害のある女性の歩行訓練のお話です。
この女性は、視野が狭くなった影響か、道の端を歩いているつもりがいつの間にか車道の真ん中に出ていた、ちょっとしたはずみで体の向きが変わると、どちらを向いているか分からなくなるということでした。
視野に入るものは見えますので、ここでは看板を目印にしよう、この区間は路上の白線が使えるね…と、手がかりを確認しながら進めていきます。

横断歩道を渡り終えた後、目的の建物のすぐ近くまで来ているのに、歩いていく方向が分からなくなる場面がありました。
さてどうする?…我々の足元には、その建物まで続く点字ブロックが敷いてありました。
そこで、足元から伸びる点字ブロックを目で追って方向を取り、それから歩くようにしました。
「これなら歩けそうです。
考えれば必ず方法はあるんですね」

この女性はこんなことも話してくれました。

「以前見えていた時は、点字ブロックのことは全く意識したことはありませんでした。
見えにくさが進んできた今、これがあるのとないのとでは、安心感が全然違います。
点字ブロックがあることで、どれだけ安心して歩けることか」

訓練利用者の後ろを歩いていると、まっすぐ前に伸びる点字ブロックは、まるでその人が歩む生き方の道筋を示しているように思えることがあります。
環境の中にある手がかりの使い方は人によって様々ですが、その人にとってベストな方法を一緒に考え、いつかその人ひとりで歩んでいけるようなサポートをこれからも続けていきたいと思っています。
より安全で快適に歩きたい、そんな方からのご相談をお待ちしています。

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編集後記

昨今の高額な賠償を伴う深刻な自転車事故の増加を背景に兵庫県では全国で初めて自転車利用者に賠償保険への加入が義務化されました。
気をつけていても思わぬところで事故に遭遇し、賠償責任を負うことになるかもしれません。
施設でも福祉勉強会にて「個人賠償責任補償」について学びました。
歩行中に周囲の人に当たって相手の方がケガをされたり、物を壊した。
そんなときにも補償される保険です。
既にご家族やご自身が加入されている自動車・火災・生命保険等にも特約でついていることがあります。
これを機に保険の見直しをしませんか?(和田)

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