以下本文

神戸アイライト通信  NO.24
発行:2010年12月

・視覚障害専門相談事業(トータルサポート事業)継続です
・最近のロービジョン関係の話題
・アイライトフェア2010開催
・電子レンジを利用したレシピ
・編集後記

視覚障害専門相談事業(トータルサポート事業)継続です

理事長  森 一成

トータルサポート事業が委託期限の3年目となり、相談が絶えない状況の中、今後も気軽にご相談いただける場所として継続していくためにどうしていけば良いかについて神戸市と交渉を重ね、連携機関とも検討し、障害者自立支援法改正の動向にも注目しています。

 2008年度より視覚障害・ロービジョンに関する専門的な情報提供(相談対応)として開始した3年間の視覚障害専門相談事業「視覚障害者トータルサポート事業」が最終年度となりました。来年度以降の事業継続について神戸市内はもちろん全国の多くの皆さんが、ご心配をしていただきました。それとともに事業継続を願う皆様から多くのご支援を頂きました。私たちも相談が増加している現状、兵庫県眼科医会が相談先を紹介するリーフレット「つばさ」を発行するなど医療と福祉の連携が進んでいる状況の中で、ぜひとも継続が必要ということで今年度になり神戸市と交渉を重ねてきました。その結果、神戸市にもご理解をいただき来年度からも当面事業継続ができることになりました。ご支援、ご協力をいただいた多くの皆様にお礼申し上げます。

 会報でも何度も書かせていただきましたが、目が見えにくい、見えない状態になると多くの困難が生じます。しかし方法を工夫したり、便利な用具を使ったりすることにより改善できる場合も多々あります。この困難改善の一連の取り組みが視覚障害リハビリテーションです。非常に多くの人が人生の途中で見えにくくなった、見えなくなったかたです。そして見えにくくなった時に視覚障害リハビリテーションを知っている人は、ほとんどいないのが現状です。障害者、福祉の相談機関でも十分に知られておりません。そういった人々を視覚障害リハビリテーション等の専門的情報につなぐのが、視覚障害専門相談(トータルサポート事業)です。
 視覚障害リハビリテーション等の専門的情報が知られていないのには、いくつかの理由が考えられます。まず視覚障害者の数が身体障害者の中で比較的に少ない。身体障害手帳所持者全体の約1割が視覚障害です。接したことのない人、考えたことのない人が多いということが考えられます。
 それから人は日々の生活の中で目から8割以上の情報を入手していると言われています。他の身体障害の場合、目からの情報入手が可能ならば、自分で障害を克服する、改善する情報のほとんどは入手できます。視覚障害は、そういったリハビリテーション等情報を入手することが困難という特性があるのです。
 第3に視覚障害は必要な情報が、個人差も大きく多種多様だという特徴です。本を読むことひとつをとっても点字、カセット・CD、パソコン、拡大文字(必要な大きさも人それぞれ)、普通の文字(視野狭窄の人など)などさまざまな方法があります。点字の本を作れば事足りるわけではないのです。そこで、その人の見え方や必要性を考えて専門的情報を提供する視覚障害専門相談事業の重要性があります。今後は安定した形態でこの事業が、訪問サポート事業等とともに地域で継続実施できるように願っています。

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最近のロービジョン関係の話題

副理事長 山縣祥隆(山縣眼科医院)

 アイライト協会会員の皆様、いよいよ年の瀬ですが、お元気でお過ごしのことと思います。
 日本ロービジョン学会学術総会が10月22日~24日、岡山市の岡山シンフォニーホールで開催され、600名以上の参加者を迎えて盛況の内に閉会しました。最も印象的だったのは、全盲で世界的に有名なピアニスト、梯 剛之(かけはし たけし)さんのピアノコンサートで、素晴らしいショパンのピアノ曲を堪能しました。
 私はワークショップⅠ「ロービジョンケアを始めよう 広めよう」において、兵庫県でのロービジョンケアの啓発、普及のために行ってきた兵庫県ロービジョン講習会、兵庫県ロービジョンマップ、そして前回のアイライト通信でご紹介したロービジョンケア紹介用リーフレット「つばさ」の紹介を行いました。この「つばさ」は、まだロービジョンケアの情報を知らない兵庫県内の視覚障害者に、その情報を伝えるための手段として、一般の眼科の先生向けに開発したもので、アメリカ眼科学会の開発したスマートサイトが原型となっています。見えにくいことでお困りの方の相談窓口は神戸アイライト協会で、今年の2月に発行後、毎月数名程度の相談があり、一定の効果があると考えています。
 さて、全国に目を向けると、まだまだロービジョンケアの普及度には地域差があり、ほとんどロービジョンケアが行われていない地域も少なくありません。そこでシンポジウムⅡ「夢を語ろう」で、埼玉県の国立障害者リハビリテーションセンター病院眼科の仲泊聡先生から、アメリカのようにインターネットを利用した全国版のスマートサイトを計画中とのお話がありました。おそらくインターネットを利用して、ロービジョンケアの情報を配信するサービスになると思います。いずれにせよ、視覚に障害をもつ方にロービジョンケアあるいは視覚障害リハビリテーションの情報が届くように全国の眼科医が頑張っていることをご報告いたします。

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アイライトフェア2010開催

事務局 和田眞由美

11月7日(日曜) 神戸市立葺合文化センターにおいてアイライトフェアを開催いたしました。通所メンバーとスタッフによる心和むミニコンサートで開幕し、山縣先生の医療講演では眼科医療と福祉を結ぶリーフレット「つばさ」発行についての報告、高知県身体障害者連合会より視覚障害者生活指導員の別府あかねさんには高知における視覚障害リハビリテーションの事業化までの経緯と現在の状況、東西に広い高知県を元気に飛び跳ねるようにパワフルなご講演をいただきました。パネルディスカッションについては以下をご覧ください。

 「各地に学ぶ視覚障害サポート」見えない、見えにくい人に住みやすい地域にするために、と題したパネルディスカッションでは相談対応や訪問指導にあたっていらっしゃる京都府視覚障害者協会事務局次長の高間恵子さん、大阪市身体障害者団体協議会の視覚障害者訪問指導員、小野義雄さんに加わっていただき、きんきビジョンサポート堀康次郎さんのコーディネートで各地の状況と課題を話し合うことができ、「仲間がいる」という心強さとネットワークの強化を再確認できました。

 大阪市では昭和46年より大阪市の委託事業として「在宅視覚障害者訪問指導事業」がスタートし、現在は正規職員3名体制で専門のスタッフによる相談や訪問での訓練がおこなわれているとのこと。高齢で介護事業所を利用される方も多く、視覚障害者自身が訓練すればできる可能性のあることまでヘルパーさんに任せてしまっている実情もあり、介護事業所との連携や視覚障害のリハビリテーションを担うものとしてどう捉えていくかが課題とのお話でした。また京都では、京都ライトハウスの建物の中に京都府視覚障害者協会があり昭和50年代より京都市の事業として「中途失明者生活指導員派遣事業」がスタート。福祉に予算がついた時期に、相談事業・ガイドヘルパー事業・訪問歩行訓練事業(府と市)などもスタートし、京都ライトハウスの創設者である鳥居篤治郎氏の「京都ライトハウスと京都府視覚障害者協会は『車の両輪』でなければいけない」というお言葉のとおり、連携を図って相談や訪問指導にあたっていらっしゃるとのこと。専任の相談員が訪問してお話をうかがうというスタイルも他には少なく、移動が困難な視覚障害者にとっては、初めの1歩を踏み出しやすい。今後は医療の連携や見えないとはどういうことか?また、用具を御存じでない役所やハローワークの方々にも研修をしていくなどが課題とのお話でした。また、他府県の状況を知る、そういったことに触れるスタッフが増えて全体的な底上げが必要という力強いメッセージもありました。

 高知では高知県立盲学校の中に別府あかねさんの活動拠点「ルミエールサロン」という相談を受けたり用具紹介ができる場所があり、現在2名の職員体制(1名欠員)で相談や訪問での訓練指導にあたっているとのこと。別府さんが視覚障害者生活指導員の資格を取られた12年前には、身体障害者手帳を何十年以上も前に取得したのに音声時計を知らない人が多くてショックだったとのこと。制度もなく情報も伝わらない現状を打破すべく別府さんとご自身も弱視でいらっしゃる吉野由美子先生(当時は県立高知女子大学)のご尽力により、この10数年で現在の形を築かれたとのこと。訓練を受けられる事業整備も大事、合わせて医療や行政との連携、環境の整備、社会の理解にも力を入れてやっていきたいと思って活動していますとのお話でした。

 兵庫県において眼科医やスタッフの方々へのロービジョンケアの講習会を開催してこられた山縣先生からは、ロービジョンケアに関心がない、または関心があってもできない眼科がたくさんあり、その眼科に通う患者さんがいる。そこに情報を流すには、「つばさ」という簡単で(医療と福祉・リハ機関とを結ぶために)役に立つ道具を考えたとのこと。最終的には眼科医会の先生方の協力を得て眼科医会の事業のひとつとして組み入れてもらい、継続性のある事業にしていかなければいけないと強調されました。
 8年前に発症、仕事を休職し日本ライトハウスで訓練を受けたあと復職された堀康次郎さんからは、神戸アイライト協会がおこなう「ワンストップサービスによる視覚障害トータルサポート事業」について、早い段階で「つばさ」を手渡すこと、相談窓口としての神戸アイライト協会の存在が非常に重要。障害者保健福祉計画には4つのことが謳われている。1つは地域生活、2つは就労、3つは生活の質QOLの充実、4つは共生社会、これはまさにトータルサポート事業の目標そのままで、非常に合致した活動であるとの見解をいただきました。

 ご来賓として神戸市の黒田議員と障害福祉部自立支援課の飯島課長にお越しいただき、ご挨拶を賜りました。神戸でのトータルサポート事業を安定継続した事業にするためには医療と福祉と行政との相互理解が必須で、今回、同じ場所に集まっていただけたことは大きな1歩として大切に着実に進めていく所存です。今後ともご支援ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

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アイライトクッキング(電子レンジを利用したレシピ)

「かれいの煮つけ」を紹介します。鍋で作るのと違い、煮くずれしないから初めての人でもきれいに仕上がります。お試しください!

★かれいの煮つけの材料(2人分)
  ・かれい 2切れ(200グラム)
  ・あわせ調味料
    しょうゆ 大さじ2
    砂糖 大さじ2
    酒 大さじ2

★作り方
  1.かれいは縦に1本、骨に届くまで切り込みを入れます。
  2.耐熱皿にあわせ調味料を入れて、混ぜて砂糖を溶かします。
    かれいを盛り付けたときに表になるほうを上にして置き、
    スプーンで調味料をかけます。
  3.2に端を少しあけてラップをして、
    ターンテーブルに「割り箸ゲタ」をして耐熱皿をのせ、
    500ワットで7分加熱します。
    取り出して器に盛り、煮汁をかけます。

★ポイント★
  電子レンジのターンテーブルに割り箸2膳をバラして置き、
  その上に器をのせる「割り箸ゲタ」の工夫をすると、
  下側にも熱の通り道ができて均一に加熱され、
  途中で裏返す手間が省けます。

参考:「簡単!電子レンジレシピ100」(村上祥子 著)
(歩行訓練士 住吉葉月)

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(編集後記)

長く続いた夏のある日、左の耳が聞こえにくくなり「神経を痛めてますね」先生のその言葉に「音を失うかも?」という言い知れぬ大きな恐怖感に襲われました。幸い投薬治療で聴力は快復しましたが、もしもの場合はAさんに相談してみよう、Bというセンターもあるといった情報が不安を緩和させてくれました。「視力を失うかも?」私が感じた以上の不安を継続して感じながら過ごしている方がたくさんいらっしゃると思われます。情報を伝えるための「つばさ」がその方の元へ届くことを願っています(和田)

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