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当協会の会報を、バックナンバー含めて総てお読みいただけます。1999年から続く本会の歩みをぜひご覧ください。視力を使わずに自由に街路を闊歩できる技術、歩行訓練。ここではその体験者の皆様のお声をインタビュー形式でお読みいただけます。ここでは視力を用いずにパソコンを利用されている様々な当事者の方の事例をご紹介します。

歩行訓練士スーちゃんとの街歩きコラム♪

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とある老紳士のお話

 わたしは、歩行訓練士ではありますが、普段は神戸アイライト協会で見えにくい方の相談もおききしています。
ある日、80代の老紳士が、白杖を持つことを考えているということで相談に来られました。

その方はゆっくりと、相談に来られた理由を語ってくださいました。そのお話がとても印象的だったので、ここに残したいと思います。
以下、その老紳士のお話の内容です。

「わたしは見えにくさはありますが、慣れた所は頭の中に地図が入っているので、なんとか移動はできています。
足腰も、幸い未だしっかりしておりますし、特に杖などは使わずにいました。

さて、わたしは音楽を聴くのが好きで、コンサート会場に出かけます。
一緒に行ってもらえる人がいればいいですが、その人もその音楽が好きでなければ苦痛でしょう。
なのでその日は一人でコンサートに行きました。

コンサート終了後、観客が一斉に帰るので、わたしは駅まで、点字ブロックの上をゆっくり歩いていました。
すると、おばちゃんにこう声をかけられたんです。
「ちょっとあんた、後ろに杖持ってる人おるやんか!」
振り返ると、確かに杖を持った人がおりました。
わたしはあわてて道を譲りましたところ、その方は歩いていかれました。

その後、おばちゃんは「あんたみたいな、ぼーっとした人がおるから困るやんか!」と言うので、わたしは上着のポケットに入っていた身体障害者手帳を見せて、
「確かにゆっくり歩いていて、邪魔をしたのは申し訳ない。しかし、杖こそ持っていないが、わたしも見えにくいものです。というわけで、ご勘弁願いたい」
と伝えたところ、そのおばちゃんはプイッと、何も言わずに人ごみの中に紛れていきました。

このご時世、人に声をかけるのはなかなかできることではない。その方も勇気がいることだったと思います。しかし、最後の振る舞いは残念でした。
その方も後味の悪い思いをされたことでしょう。ならばどうしたらよかったか。
これは、自分が白杖をもって、周囲に気づいてもらわなければならないだろうとの思いに至り、今日、相談に来させてもらった次第です。

前置きが長々とすみません。さあ、私の風呂敷はすべて広げて見ていただきました。
よろしくお願いします。」

以上です。
わたしは内心、(この方は素晴らしい、自ずと白杖の役割を見抜いておられる)と感動しながら、老紳士に合った白杖を選ばせていただきました。

…こんな感じです。
わたしもライブが大好きです。この老紳士が今後も安全に、コンサートを楽しんでくれるといいなぁと思っています。


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